『図書館戦争』レビュー:自由と愛の戦いが交錯する感動の物語

『図書館戦争』レビュー:自由と愛の戦いが交錯する感動の物語

『図書館戦争』:自由と愛の戦いが交錯するエンターテインメント

『図書館戦争』は、有川浩の大人気小説を原作としたTVアニメシリーズで、2008年4月10日から6月26日まで放送されました。シリーズ累計125万部を超えるこの作品は、架空の現代日本を舞台に、不当な検閲から「本」を守るために戦う図書隊員たちの奮闘と日常を描いたエンターテインメント小説です。アニメ化にあたっては、プロダクションI.Gの"I.G 9課"が制作を担当し、浜名孝行監督のもとで緻密な設定と圧倒的な映像美が実現されました。

ストーリー

2019年(正化31年)、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる『メディア良化法』の成立から30年が経過した日本では、メディア良化委員会と図書隊が対立しています。主人公の笠原郁は、念願の図書隊員として採用され、両親には言い出せないまま、危険を伴う防衛員を志望し、軍事訓練に励む日々を送っていました。高校時代、書店でメディア良化隊員に本を奪われそうになったところを一人の図書隊員に救われた経験から、その「正義の味方ぶり」に憧れ、自分も図書隊に入隊して本を守ることを決意したのです。やがて、卓越した運動能力と情熱が評価され、郁はエリートによる精鋭部隊「ライブラリー・タスクフォース(図書特殊部隊)」に配属されます。

解説

『図書館戦争』シリーズは、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」が成立・施行された架空の現代日本を舞台に、不当な検閲から「本」を守ろうとする図書隊員たちの戦いと日常を描いたエンターテインメント小説です。シリーズは『図書館戦争』『図書館内乱』『図書館危機』『図書館革命』の4巻に加え、スピンオフ小説『別冊 図書館戦争I』『別冊 図書館戦争II』が発売され、シリーズ累計は125万部を超えています(2008年8月現在)。

アニメーション制作を手がけたのは、プロダクションI.Gの"I.G 9課"で、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズや『精霊の守り人』などの硬派なアニメーションで知られています。浜名孝行監督のもと、図書館を舞台に繰り広げられる"王道ラブコメ"に挑戦し、緻密な設定と圧倒的な映像美で描かれた緊迫感溢れる戦闘シーンや、図書隊員たちの小気味良い日常アクションが魅力です。

放送は、幅広い視聴者層から支持を受けるフジテレビの「ノイタミナ」枠で行われました。「ノイタミナ」は、2005年4月に「連ドラのようなアニメ」をコンセプトに設立された深夜枠で、従来のテレビアニメの常識を覆すことを目指しています。これまでに『ハチミツとクローバー』『のだめカンタービレ』などの作品が放送され、TVドラマや実写映画と連動したメディアミックス展開でも注目を集めました。『図書館戦争』もその一環として、多くの視聴者に愛されました。

キャスト

・笠原 郁/井上麻里奈
・堂上 篤/前野智昭
・小牧幹久/石田 彰
・手塚 光/鈴木達央
・柴崎麻子/沢城みゆき
・玄田竜助/鈴森勘司
・稲嶺和市/佐藤晴男

メインスタッフ

・原作/有川浩
・原作協力/電撃文庫編集部、電撃文庫MAGAZINE編集部(徳田直巳、粂田和之)
・企画/松崎容子(フジテレビ)
・製作/寺崎博礼、服部洋、後藤靖彦、佐藤康弘、伊藤幸弘(フジテレビ)、石川光久
・プロデューサー/高瀬敦也(フジテレビ)、竹内文恵、西村知恭、細貝康介(フジテレビ)
・アシスタントプロデューサー/斎藤彩(フジテレビ)
・監督/浜名孝行
・シリーズ構成/古怒田健志
・キャラクター原案/徒花スクモ
・キャラクターデザイン、総作画監督/中村悟
・デザインワークス/常木志伸
・美術監督/池田繁美
・美術設定/荒川直樹
・色彩設計/片山由美子
・色彩設定補佐/菅原美佳
・特殊効果/村上正博
・撮影監督/田中宏侍
・編集/植松淳一、奥野英俊
・3D監督/遠藤誠
・音響監督/平光琢也
・音楽/菅野祐悟
・音楽プロデューサー/佐野弘明
・音楽制作協力/フラッグシップ
・音楽制作/フジパシフィック音楽出版、ソニー・ミュージックエンタテインメント
・制作デスク/本多史典
・設定制作/谷村大四郎
・アニメーション制作/PRODUCTION I.G
・制作/図書館戦争製作委員会(アスミック・エースエンタテインメント、電通、アスキー・メディアワークス、ソニー・ミュージックエンタテインメント、フジテレビ、プロダクションI.G)

メインキャラクタ

・笠原 郁(かさはらいく)
図書特殊部隊・堂上班所属。一等図書士。22歳。身長170cmで運動神経抜群だが座学は全般的に苦手。高校生の時に窮地を救ってくれた図書隊員(=王子様)に憧れ、いつか会える日を夢見て入隊した直情型ヒロイン。「山猿」「熊殺し」などの異名を持つ。
・堂上 篤(どうじょうあつし)
図書特殊部隊・堂上班班長。二等図書正。27歳。身長165cm。郁たちの指導を担当する上官。実直で責任感が強いがゆえに新人図書隊員を厳しく絞り、鬼教官と呼ばれる。
・小牧幹久(こまきみきひさ)
図書特殊部隊・堂上班副班長。二等図書正。26歳。身長175cm。堂上の同僚(学年同じ早生まれ)で、一緒に郁たちの指導を担当する。堂上とは対照的に物腰が柔らかく常に笑顔だが、恐ろしく切れ味の良いシビアな言葉がサラッと飛び出すことがある。
・手塚 光(てづかひかる)
図書特殊部隊・堂上班所属。一等図書士。22歳。身長180cm。図書館協会・会長を父親に持つエリート。日々努力を惜しまない秀才だが、落ちこぼれには徹底的に厳しく、郁への攻撃も容赦ない。
・柴崎麻子(しばさきあさこ)
武蔵野第一図書館・図書館業務部の図書館員。一等図書士。身長157cm。22歳。明晰な頭脳と端整な容姿を備えた郁のルームメイト。口は悪いが、素早い情報収集能力と超S級の如才無さで郁を助ける。
・玄田竜助(げんだりゅうすけ)
三等図書監。身長185cm。43歳。義理人情を尊ぶ豪傑で、防衛部・図書特殊部隊隊長。「無法は無茶で叩き潰すのが図書隊の流儀だ」などの破天荒な名言は数知れず。
・稲嶺和市(いなみねかずいち)
関東図書基地司令。特等図書監。正化11年2月7日に起こった「日野の悪夢」事件当時、同図書館の館長を務めていた。右足を失っており、車椅子で生活している。

メインロボ・アイテム

・図書館の自由に関する宣言(としょかんのじゆうにかんするせんげん)
『図書館戦争』にも登場する「図書館の自由に関する宣言」。これは、全国の図書館にも実際に掲げられています。「図書館の自由に関する宣言」は、1954年、5月26日~28日に開かれた全国図書館大会および日本図書館協会総会で採択されました。その後、1963年の『中小都市における公共図書館の運営』(略称「「中小レポート」)刊行を契機に、公共図書館は急速に発展、貸し出しを中心とする資料提供を核としての様々なサービスが開始します。そして、1979年、25年間の図書館界の経験を集約し、より実践に裏づけられたかたちで改訂が行われました。現在の図書館に掲げられている宣言は、この「図書館の自由のに関する宣言 1979年改訂」というものです。以下のとおり、フィクションとしてアレンジされた『図書館戦争』の世界に登場する文言とは若干異なります。

「図書館の自由に関する宣言」
日本図書館協会 1954 採択 1979改訂
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する
第2 図書館は資料提供の自由を有する
第3 図書館は利用者の秘密を守る
第4 図書館はすべての検閲に反対する

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る

・メディア良化法(めでぃありょうかほう)
年号が正化に変わる頃、公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる目的で制定された法律。この法律に基づき、司法省の下部組織として「メディア良化委員会」が発足された。メディア良化委員会は、各都道府県に代執行機関となる良化特務機関を設置、あらゆるメディアの良化を目指し、公序良俗に反する書籍・映像作品・音楽作品などを任意で取り締まる権限を持った。その内容は、小売店に対しては入荷物の検閲、版元には流通差し止め命令、マスコミには放送禁止・訂正命令、インターネットではプロバイダーへの削除命令など多岐に渡る。検閲基準に関しては、細則や施行令で随時補うことができ、その裁量権は執行機関に委ねられるという極めて恣意的なもので、抵抗する者には武力の行使も許可されている。

・図書館の自由法(としょかんのじゆうほう)
メディア良化法の検閲に対抗するため、図書館法全三章に付け加える形で成立した"図書館法第四章"の通称。
<<図書館法第四章 図書館の自由>>
第三十条  図書館は資料収集の自由を有する。
第三十一条 図書館は資料提供の自由を有する。
第三十二条 図書館は利用者の秘密を守る。
第三十三条 図書館はすべての不当な検閲に反対する。
第三十四条 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。
運用詳細は、メディア良化法と同じく施行令で随時補われる。

・図書隊(としょたい)
メディア良化委員会に唯一対抗できる根拠法を持つ図書館が、正化16年に発足させた防衛組織。広域地方行政機関としての性質を持ち、独自に人事・予算管理を行う。図書隊の職域は、図書館業務部に所属する図書館員、防衛部に所属する防衛員、蔵書の装備・戦闘装備の整備・物流一般を行う後方支援部に所属する後方支援員の3つに分けられる。

主に防衛員から精鋭を選抜して編成されるライブラリー・タスクフォース(図書特殊部隊)は、平時は基地に駐屯し、各図書館の要請に応じ出勤、通常図書館業務から大規模攻防戦まで幅広い任務をこなす。

サブタイトル

・状況〇一/我ガ王子様ハ図書隊ニアリ(2008/04/11)
・状況〇二/図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)(2008/04/18)
・状況〇三/小田原攻防戦(2008/04/25)
・状況〇四/図書隊司令ヲ奪回セヨ(2008/05/02)
・状況〇五/両親攪乱作戦(2008/05/09)
・状況〇六/図書隊ハ発砲セズ(2008/05/16)
・状況〇七/恋ノ情報探索(恋のレファレンス)(2008/05/23)
・状況〇八/策動セシハ手塚慧(2008/05/30)
・状況〇九/昇任試験、来タル(2008/06/06)
・状況一〇/里帰リ、勃発(2008/06/13)
・状況一一/死闘!茨城県展警備(2008/06/20)
・状況一二/図書館ハ誰ガタメニ(2008/06/27)

関連作品

・図書館戦争 未放送話
・図書館戦争 革命のつばさ

主題歌・楽曲

・OP1
・あたしの街、明日の街
・作詞/高橋瞳
・作曲/平出悟
・編曲/平出悟
・歌/高橋瞳

・ED1
・changes
・作詞/小出祐介
・作曲/小出祐介
・編曲/Base Ball Bear
・歌/Base Ball Bear

『図書館戦争』の魅力と評価

『図書館戦争』は、自由と愛をテーマにしたエンターテインメント作品として多くのファンを魅了しました。以下では、その魅力と評価について詳しく見ていきます。

ストーリーの魅力

『図書館戦争』のストーリーは、架空の現代日本を舞台に、不当な検閲から「本」を守るために戦う図書隊員たちの奮闘と日常を描いています。主人公の笠原郁が図書隊員として成長していく過程や、彼女が憧れる「王子様」との出会いと再会、そして図書隊員たちの絆や恋愛模様が丁寧に描かれています。特に、郁の直情型ヒロインとしての成長や、堂上篤との関係性の変化は見逃せないポイントです。また、メディア良化法と図書館の自由法という対立する法律の存在が、物語に緊張感と深みを与えています。

キャラクターの魅力

『図書館戦争』のキャラクターは、それぞれ個性的で魅力的です。主人公の笠原郁は、運動神経抜群で直情型のヒロインとして描かれ、彼女の成長や奮闘が物語の中心にあります。堂上篤は、厳格な鬼教官でありながらも、郁への思いやりや責任感が垣間見えるキャラクターです。小牧幹久や手塚光、柴崎麻子など、他のキャラクターもそれぞれの個性や背景が描かれており、視聴者を引きつけます。また、玄田竜助や稲嶺和市といったベテランキャラクターの存在も、物語に深みを与えています。

映像と音楽の魅力

『図書館戦争』の映像は、プロダクションI.Gの"I.G 9課"による緻密な設定と圧倒的な映像美が特徴です。戦闘シーンの緊迫感や、図書館の日常を描くシーンの温かみが、視覚的に楽しむことができます。また、浜名孝行監督の演出も見事で、キャラクターの魅力を引き出すことに成功しています。音楽面では、高橋瞳の「あたしの街、明日の街」がオープニングテーマとして、Base Ball Bearの「changes」がエンディングテーマとして使用され、物語の雰囲気を盛り上げています。

評価と受け入れられ方

『図書館戦争』は、原作小説のファンだけでなく、アニメファンからも高い評価を受けました。特に、自由と愛をテーマにしたストーリーや、個性的なキャラクターたち、緻密な映像と音楽が評価されました。また、フジテレビの「ノイタミナ」枠で放送されたこともあり、幅広い視聴者層から支持を受けました。アニメ化にあたっては、原作の魅力を最大限に引き出しつつ、新たな視点や演出を加えることで、さらに多くのファンを獲得しました。

『図書館戦争』の推薦と関連作品

『図書館戦争』は、自由と愛をテーマにしたエンターテインメント作品として、多くのファンに推薦できる作品です。特に、原作小説のファンや、アニメファン、ラブコメディやアクションが好きな人にはおすすめです。また、図書館や本に興味がある人にも楽しめる作品です。以下では、『図書館戦争』の関連作品について紹介します。

関連作品

・図書館戦争 未放送話
『図書館戦争』の未放送話として、OVAが制作されました。こちらも原作の魅力を引き継ぎつつ、新たな視点やストーリーが描かれています。
・図書館戦争 革命のつばさ
『図書館戦争』の続編として、映画『図書館戦争 革命のつばさ』が制作されました。こちらも原作の世界観を引き継ぎつつ、新たなキャラクターの登場やストーリーの展開が楽しめます。

結論

『図書館戦争』は、自由と愛をテーマにしたエンターテインメント作品として、多くのファンを魅了しました。緻密な設定と圧倒的な映像美、個性的なキャラクターたち、そして緊張感溢れるストーリーが評価され、幅広い視聴者層から支持を受けました。原作小説のファンだけでなく、アニメファンやラブコメディ、アクションが好きな人にもおすすめの作品です。関連作品も含めて、ぜひ楽しんでください。

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