嘘が起こっているかどうか本当にわかるのでしょうか?

リヴァイアサンプレス:

最近、私はクリステンセン、張英英殺人事件、フロリダ夫殺人事件、カナダ空軍大佐殺人事件など、いくつかの事件の警察/FBI尋問ビデオを見ることに夢中になっています。ここで最も興味深いのは、警察の尋問プロセスに直面したときのこれらの容疑者の外見上のパフォーマンスです。明らかに、彼らの答えは嘘だらけです。法的な制裁を逃れるために、容疑者それぞれが異なった行動を取っており、これはある面から見ると嘘の複雑さを示している。

クリステンセン氏（右）が尋問を受けているビデオのスクリーンショット。 © ユーチューブ

警察官は常に、犯罪心理学の観点から容疑者の姿勢や表情などのボディランゲージを分析したいと考えているが、こうした非言語的な手がかりは必ずしも嘘つきと関係があるとは限らず、警察の誤判断につながることさえある。 17歳のマーティ・タンクレフはロングアイランドの自宅で両親が死亡しているのを発見した。彼の母親は刺殺され、父親は撲殺された。警察は、彼があまりにも冷静すぎると考え、無実を主張していたにもかかわらず、嘘をついていると信じた。彼は殺人罪で起訴され、17年間刑務所で過ごした。

別の事件では、16歳のジェフリー・デスコビックは高校の同級生が絞殺された後、非常に動揺し、刑事が事件を解決するのを手伝うことに熱心だった。警察は再び彼が嘘をついていると信じ、懲役16年の刑を言い渡した。

1989年9月7日、殺人課の刑事がマーティ・タングレフの自宅前で事情聴取を行っている。©トニー・ジェローム/ニューズデイRM/ゲッティ

二人のうち一人は落ち着きすぎており、もう一人は動揺しすぎていました。なぜ、この全く異なる二つの感情が、警察によって隠された犯罪の手がかりとみなされるのでしょうか?

ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ刑事司法大学の詐欺研究者で心理学者のマリア・ハートウィグ氏はそう語る。後に無罪となったタングレフとデポソビッチは、人が嘘をついているかどうかは行動を見ればわかるというよくある誤解の犠牲者だった。どの文化でも、目をそらす、そわそわする、どもるなどの行動は、その人が嘘をついていることを明らかにすると人々は信じています。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0022022105282295)

実際、10年以上の研究を経ても、この主張を裏付ける証拠は乏しいままです。ハートウィグ氏は、Annual Review of Psychology 誌に掲載された嘘をつく際の非言語的手がかりに関する研究の共著者である。 「嘘を研究する研究者として私たちが抱える問題の一つは、誰もが嘘の仕組みを知っていると思っていることだ」と彼は言う。この自信過剰は、タングレフとデポゾビッチに起こったように、重大な誤判断につながる可能性があります。 「ポリグラフ検査の誤りは社会と誤って有罪判決を受けた本人に深刻な影響を及ぼす可能性がある。その代償は非常に大きい」とハートウィグ氏は述べた。

(www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev-psych-010418-103135)

心理学者は、嘘つきを見破るのがいかに難しいかを昔から知っています。 2003年、現在カリフォルニア大学サンタバーバラ校に所属する心理学者ベラ・デパウロ氏とその同僚は科学文献を徹底的に調べ、人々が嘘をついたときと真実を語ったときの行動を比較した116の実験を収集した。実験には、目をそらす、瞬きする、声を上げる（この行動はスピーチの内容とは関係がないので、これも非言語的合図である）、肩をすくめる、姿勢を変える、頭、手、手足を動かすなど、100 を超える可能性のある非言語的合図が含まれていました。結果は、瞳孔の拡大や声の高さのわずかな上昇（人間の耳にはほとんど気づかれない程度）など、いくつかの指標は弱い相関関係にあったものの、どの指標も嘘つきを示すことはできないことを示した。

(smg.media.mit.edu/library/DePauloEtAl.Cues%20to%20Deception.pdf)

3年後、デポール大学とテキサスクリスチャン大学の心理学者チャールズ・ボンドは206件の研究を検討した。この研究には24,483人の観察者が参加し、4,435人から提供された6,651件の情報の真実性を判断した。法執行機関の専門家であれ、学生ボランティアであれ、真贋を判断する正確率は 54% を超えず、運よりわずかに高い程度です。 1 回の実験の精度は 31% から 73% の範囲で、小規模な実験では大きな差が見られました。 「小規模な研究では、運が大きく影響する」とボンド氏は言う。 「十分な規模の研究を行うと、運は要素の半分しか占めなくなります。」

スウェーデンのヨーテボリ大学の心理学者で応用データアナリストのティモシー・ルーク氏は、このサイズ効果は、いくつかの実験では単なる偶然で高い精度が得られる可能性があることを示唆していると述べています。 「今までに大きな効果が見つかっていないのなら、それはおそらく、それが存在しないからだろう」と彼は語った。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/1745691619838258)

しかし、警察は通常、別の話をします。彼らはその実験が十分に現実的ではないと信じていた。結局のところ、実験に参加するボランティアのほとんどは心理学実験室に座って指示に従って嘘や真実を話す学生であり、一方容疑者は取調室や証言台で尋問され、彼らが直面する結末はまったく異なるのだという。

ジョセフ・バックリーはジョン・リード法律事務所の代表であり、同事務所は毎年何千人もの法執行官に行動ベースのポリグラフ検査の訓練を行っています。同氏は「実験の『有罪』者には何も危険はなかった。これは真の自然な動機ではない」と述べた。

英国ポーツマス大学の心理学者サマンサ・マン氏は、20年間にわたり欺瞞を研究してきた。彼女はこの分野で働き始めた当初、警察の反対は正当だと思っていた。この問題をさらに深く掘り下げるため、彼女と同僚のアルダート・フライ氏は、有罪判決を受けた殺人犯に対する警察の尋問を録画した何時間も視聴し、確実な真実を3つと確実な嘘を3つ選んだ。マン氏はその後、65人の英国警察官に6つの陳述を見せ、それが真実か虚偽かを判断するよう求めた。尋問はオランダ語で行われたため、警官は完全に非言語的な手がかりに頼った。

警官の判断は64パーセント正確で、偶然よりはましだが、まだ十分正確ではないと彼女は語った。最も正確率が低かった警官は全員、「嘘つきは目を合わせないようにする」や「嘘つきはそわそわする」といった従来の非言語的合図に頼っていると述べた。実際、殺人犯は嘘をついている間ずっと目を合わせており、落ち着いていた。 「その男は明らかに緊張していた、それは間違いない」とマン氏は言う。しかし、彼は自分の動きをコントロールし、嘘つきのステレオタイプを巧みに避けた。

マン氏とフリギー氏はその後、別の研究を行った。今回、オランダ警察は52人の警察官に、テレビで放映された記者会見で親族殺人の犯人数名の供述を視聴させた。殺人犯たちは全員、犯行を否認し、極度の悲しみを示した。警官が真実と虚偽を正しく区別できたのは50パーセント以下だった。最も正確率が低かった警官は全員、殺人犯の感情表現は本物だと信じていた。

しかし、これは何を意味するのでしょうか? 「夫が妻を殺害した場合、後悔や警察に捕まったなど、さまざまな理由で悲しみを示す可能性がある」とマン氏は語った。 「非言語行動は非常に特殊です。感情のような非言語行動に焦点を当てると、間違いを犯してしまいます。」

数年後、ハートウィグとボンドはより大規模な実験で上記の結果を検証しました。彼らは、コストの高い嘘とコストの低い嘘を見抜く人々の能力を比較した研究文献をレビューした。結果、警察の捜査で誤って告発された犯罪者や容疑者の嘘を見抜く能力が、研究室のボランティアの嘘を見抜く能力よりも優れているという証拠は見つからなかった。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3052)

連続殺人犯であろうと、研究室の学生であろうと、これらの実験に参加した人々は皆、嘘を声に出して語ったのです。 2019年に発表された研究で、マン氏は違法行為を隠蔽しようとするなどの非言語的欺瞞を調査した。これは爆弾犯や密輸業者を摘発する際に遭遇するのと同じタイプの欺瞞である。彼女は52人の大学生ボランティアを募集し、その半数に、機密写真が含まれているとされるノートPCをフェリーで都市から都市へ輸送させた。ボランティアたちは、人々が彼らを見つけ出そうとするので、群衆の中に溶け込み、「怪しい」ようには見えないようにするよう指示された。残りの半数のボランティアには、行動を隠すようにという指示なしに、通常の携帯電話を届けるよう依頼された。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3622?af=R)

マン氏はその後、別のボランティア104人にフェリーのビデオを見せ、「密輸業者」を見つけるよう依頼した。正解したのはボランティアの半分以下でした。その後のインタビューで、「密輸人」らは、非常に緊張していたが、わざと普通に振る舞い、音楽を聴いたり携帯電話を見たりして気持ちを落ち着かせたと語った。

それからマン氏は賭け金を上げた。彼女は60人のボランティアを再編成し、半数にロシア、エジプト、韓国の通貨が入った封筒を密輸させ、残りの半数には何も「密輸」させなかった。しかし今回、マン氏は2人の研究者をフェリーに派遣し、船内を歩き回って乗客を観察し、乗客の顔を携帯電話の写真と比較しているようだった。

合計120人のボランティアがビデオに映る「密輸業者」を見つけようとしたが、正解率はわずか39.2％で、半分にも遠く及ばなかった。マン氏は、その理由は「密輸業者」が故意に普通に振る舞っているのに対し、「無実の人々」は単に自然に振る舞っているだけだからだと述べた。突然の監視に彼らは驚いたが、観察者らはそれを有罪の兆候と見ていた。

フロリダ国際大学の心理学者ロナルド・フィッシャー氏は、嘘つきが緊張をうまく隠せるという発見は、欺瞞に関する研究の空白を埋めるものだと語る。 「人々の内面の感情と、他人が気づく外面的な表出を比較した研究はこれまであまり行われてこなかった」と、FBI捜査官の訓練を行っているフィッシャー氏は言う。 「結局のところ、嘘をつく人はより緊張しているが、それは彼らの内面的な感情であり、他人が観察する外面的な表現ではない。」

(journals.sagepub.com/doi/10.1207/s15327957pspr1003_2)

これらの研究により、研究者は欺瞞の非言語的手がかりを探すことをほぼ諦めることになった。しかし、嘘つきを見抜く他の方法はあるのでしょうか?今日、欺瞞を研究する心理学者は、言語的手がかり、特に嘘と真実の違いを強調する手がかりに、より多くの注目を払っています。

たとえば、尋問官は容疑者がより自由に話せるようにするために、戦略的に尋問時間を延長することがあります。こうすれば嘘つきは自分自身と矛盾することになるかもしれない。ある実験では、ハートウィグ氏はこの技術を41人の新人警察官に教えたところ、ポリグラフ検査の正答率は85パーセントだったのに対し、訓練を受けなかった41人の新人警察官の正答率は56パーセントだった。 「精度は劇的に向上しました」とハートウィグ氏は語った。

(link.springer.com/article/10.1007/s10979-006-9053-9)

別の尋問手法では、容疑者または目撃者に犯罪現場やアリバイに関連する場面を簡単に説明するよう求め、空間記憶を利用します。この方法はより多くの記憶を呼び起こすことができるため、真実を語る人はより詳細な情報を報告するでしょう。昨年、マン氏とその同僚はスパイ任務をシミュレーションした研究を発表した。 122人の参加者は学校のカフェテリアで「エージェント」と会い、コードを交換した後、荷物を受け取った。その後、レストランでの体験を詳しく尋ねると、真実を話すよう求められた人は、コードとパッケージのやり取りを隠すよう求められた人よりも76パーセント多く詳細を話した。 「何かを説明すると、その出来事を追体験するので、思い出すのに役立つ」とポーツマス大学の心理学者で共著者のハニーン・ディーブ氏は語った。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/acp.3646)

この実験は英国警察から提供された情報に基づいて計画された。英国警察はしばしば模擬尋問を実施し、心理学研究者と協力している。これは、無罪推定に基づく裁判に向けた英国の動きの一環である。 1980年代から1990年代にかけて、英国警察による不当な有罪判決や容疑者への虐待のスキャンダルが浮上した。それ以来、無罪推定に基づく尋問が正式に告発尋問に取って代わった。

しかし、米国では、そのような科学的改革はまだ警察やその他の治安機関に大きく浸透していない。たとえば、米国国土安全保障省内の運輸保安局 (TSA) では、空港の乗客をさらに尋問する際に、非言語的な合図を今でも使用しています。 TSA職員は、視線をそらす（一部の文化では敬意の表れとみなされる）、長時間の凝視、素早い瞬き、不平不満、口笛、大げさなあくび、話すときに口を覆う、過度に興奮している、大げさな服装など、疑わしい行動のスクリーニングチェックリストに従って、潜在的な嘘つきを探すように指示されている。これらすべては研究者によって完全に覆されました。

アメリカン航空は2015年から2018年にかけて、国籍、人種、民族、その他の理由で調査のために拘束されたという乗客からの正式な苦情を2,251件受け取った。捜査官がこのように曖昧で矛盾した基準に基づいて容疑者を捜索すると、多くの苦情を受けるのも不思議ではない。

TSAの空港検査方法に対する議会の監視は2013年に遡る。当時、政府監査院（政府プログラムを監査、評価、勧告する議会の機関）は行動検出方法の科学的根拠を検討し、不十分であると判断し、TSAに資金を削減し、その使用を減らすよう勧告した。これに応じてTSAは独立した行動検出担当官を解雇し、基準リストを94から36に減らしたが、過度の発汗など科学的根拠のない基準は依然として多く残された。

議会による新たな監視を受けて、TSAは2019年に従業員管理を強化し、調査や問い合わせを減らすことを約束した。それでも、警察は行動スクリーニングに傾いている。ある国土安全保障省職員が議会調査官に語ったところによると、「常識的な」行動指標は、たとえ科学的証拠の学術的基準を満たしていなくても、「合理的かつ正当な審査手続き」の対象となるべきだという。

TSAのメディア関係マネージャーであるR・カーター・ラングストン氏はKnowableへの声明で、「TSAは行動検出が国の交通システムに極めて重要かつ効果的なセキュリティ層を提供すると考えている」と述べた。 TSAは、過去11年間に2回の行動検知により、爆発物を携行した乗客3人が飛行機に搭乗するのを阻止することに成功したと指摘した。

しかしマン氏は、潜在的テロリストが何人検知されずにセキュリティチェックを通過するかを知らずにプログラムの成功を測ることは不可能だと述べた。実際、2015年に国土安全保障省の覆面捜査官が内部調査中に模造の発火装置と本物の銃を空港のセキュリティチェックに持ち込み、95%の成功率を達成しました。その後、TSAの代理局長が再任された。

2019年、マン氏、ハートウィグ氏、その他多数の大学研究者らは、行動分析スクリーニングの証拠を評価するレビューを発表し、法執行機関は「個人の生命と自由に危害を加える可能性がある」この「根本的に誤った」疑似科学を放棄すべきだと結論付けた。

同時に、ハートウィグ氏は、元アメリカ海軍犯罪捜査局捜査官、元国土安全保障省次官、国家安全保障の専門家であるマーク・ファロン氏と協力して、捜査官向けの新しい、より科学的なトレーニングコースを開発しました。 「進歩は遅い」とファロン氏は語った。しかし彼は、将来の改革によって人々が不当な有罪判決から守られ、ジェフリー・デスコビッチやマーティ・タングレフのような悲劇がさらに減ることを願っている。

タングレフにとって、嘘つきのステレオタイプは頑固なものだ。彼は無罪判決を求める闘いを何年も続け、最近弁護士として活動を始めた。その過程で、この寡黙で少々オタクっぽい男は、より多くの感情を表現することを学ばなければならず、危機管理責任者のロニー・スーリー氏の言葉を借りれば、誤って告発された無実の男のために「まったく新しい物語を構築する」必要があった。彼はこれにおいてタングレフを監督した。この策略は功を奏し、タングレブ氏は2020年についにニューヨーク州弁護士会に入会した。

愛情を表現することはなぜそれほど重要なのでしょうか?スリさんは「人々はとても偏見を持っている」と語った。

ジェシカ・シーゲル

翻訳：レイチェル

校正/アマンダ

オリジナル記事/www.theatlantic.com/science/archive/2021/03/how-to-spot-a-liar/618425/

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、レイチェルがLeviathanで公開しています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。