『月詠 MOON PHASE』レビュー：吸血鬼の魅力とコメディの融合

月詠 MOON PHASE - ツクヨミムーンフェーズ - の魅力と評価

2004年から2005年にかけて放送されたTVアニメシリーズ「月詠 MOON PHASE」は、原作が有馬啓太郎氏による漫画で、ワニブックスの月刊「コミックガム」に連載されていた作品です。このアニメは、テレビ東京で毎週月曜日の深夜25時30分から26時まで放送され、全26話のうち25話がテレビで放送され、最終話の26話はパッケージ版DVDに収録されました。アニメーション制作はシャフト、製作はビクターエンタテインメントが担当し、総監督は新房昭之氏が務めました。

ストーリー

「月詠 MOON PHASE」の物語は、心霊写真ばかり撮ってしまうカメラマンの森丘耕平が、ドイツの古城でヴァンパイアの少女・葉月と出会うことから始まります。葉月は城に幽閉されていたが、耕平の血を吸い「シモベ」として城から脱出しようと考えます。しかし、耕平にはその効果が現れず、偶然にも耕平が城の封印装置を破壊したことで、葉月は城から脱出することに成功します。葉月は生き別れの母の行方を求めて日本へ向かい、耕平の家に転がり込んで無理やり居候生活を開始します。耕平も幼い頃に母親を亡くしており、葉月の姿に自分を重ね合わせ、保護者として母親捜しを手伝うことになります。やがて、エルフリーデというヴァンパイアの少女や、デイウォーカー・ヴァンパイアのキンケル伯爵が現れ、葉月を城に連れ戻そうとします。母の行方や葉月と耕平の運命がどうなるのか、物語はその展開に引き込まれます。

キャスト

主要なキャストには、葉月役の斎藤千和、森丘耕平役の神谷浩史、御堂成児役の櫻井孝宏、エルフリーデ役のかかずゆみなどが名を連ねています。その他にも、ハイジ役の山崎雅美、安西裕美役の根谷美智子、御堂竜平役の麦人など、個性豊かなキャラクターを演じる声優陣が揃っています。

メインスタッフ

メインスタッフには、原作の有馬啓太郎、総監督の新房昭之、監督補佐の鈴木利正、シリーズ構成の関島眞頼、キャラクターデザインと総作画監督の相澤昌弘などが参加しています。また、ビジュアルディレクターの武内宣之、設定協力の尾石達也、美術監督の桑原悟など、各分野のプロフェッショナルが制作に携わっています。音楽は久米大作が担当し、音響監督は亀山俊樹が務めました。

メインキャラクタ

葉月は、初源の吸血鬼を父に持ち、その高い能力を引き継いだヴァンパイアです。社会から離れて育ってきたため、気が強くわがままな面もありますが、根は寂しがりやです。母と二人で暮していたところを引き離され、ドイツの古城に幽閉されていた時に耕平と出会い、母を探すため日本へ帰国します。「葉月」という名前は母親と二人で暮していた時に名付けられたもので、他のヴァンパイアからは幼少時の名前「ルナ」と呼ばれます。

森丘耕平は、霊能者の一族に生まれるが、霊的感覚ゼロで心霊写真ばかり撮ってしまうカメラマンです。性格は優しく、お人好しですが、内に強い芯を持っています。ドイツに取材に行った際、葉月に出会い、血を吸われたことで「シモベ」にされてしまいますが、ヴァンパイアに血を吸われても呪縛を受けない体質（「ヴァンパイアの恋人」）のため、葉月と対等にやりとりができます。実は高い霊能力を秘めているが、その能力の高さゆえに幼い頃にその能力を封印されています。

御堂成児は、耕平のいとこにあたる霊能力者で、竜平と共に耕平をサポートして活躍します。穏やかで、冷静な判断力を兼ね備えています。安西裕美は、耕平の学生時代からの友人で出版社に勤務しています。若いが有能な女性で面倒見が良く、駆け出しのカメラマンの耕平に仕事を紹介したり、葉月を生活面でサポートしてくれたりします。

エルフリーデは、葉月を連れ戻しにきたヴァンパイアの少女で、キンケル伯爵のシモベですが、耕平の血を吸ったことで支配の呪縛から逃れます。キンケル伯爵を倒した後はそのまま耕平の家に居座り、後に葉月の良き理解者となります。実はキンケル伯爵の実子で、得意技は小悪魔の召還です。キンケル伯爵は、葉月を追って来日した齢900歳のヴァンパイアで、光の屈折を操り、姿を消したり、幻を見せたりすることができます。さらには日中でも活動可能な「デイウォーカー」の能力を持っています。

ハイジ（灰次郎）は、葉月の母の分身として葉月を守る使い魔で、元々は耕平の母親の式神で「猫型」をしていたが、葉月が引き継いで「人型」となりました。活発で忠誠心に厚い性格です。御堂光は、御堂本家当主の娘で、薫とは双子の姉妹です。幼い頃に成児の許婚と決められており、本人もその関係を強く意識しています。薫の婚約者である耕平と葉月の関係を快く思わず、葉月とは顔を合わすといつもケンカをしています。霊光をまとわせた拳法を使うなど並々ならぬ身体能力を持っています。

御堂薫は、御堂本家当主の娘で、光とは双子の姉妹です。耕平とは親が決めた許婚の関係にありますが、葉月の存在が気になり内心穏やかではないようです。人見知りで、大人しい性格ですが、式神や妖魔を使役する能力を持っています。御堂竜平は、耕平の祖父（母親の父）で、骨董品屋を営む好々爺ですが、霊能力を持ち式神を使役する陰陽師でもあります。葉月が人間ではないと一目で見抜くが家に迎え入れ、耕平と共に暖かく見守ります。

サブタイトル

各話のサブタイトルは、葉月の可愛らしい性格を反映したものが多く、視聴者を楽しませます。例えば、CHAPTER：1「おにいさま、私のシモベになりなさい♥」、CHAPTER：2「御主人様とおよびなさい♥」、CHAPTER：3「おにいさま、私といっしょに暮らしてくださいね♥」など、葉月の甘えん坊な一面が垣間見えます。また、CHAPTER：13「おにいさま、みんなで伯爵を倒しましょうね♥」やCHAPTER：25「おにいさま、最終回だそうですよ♥ ずっと私のシモベでいてくださいね♥♥♥」など、物語の進行とともに葉月と耕平の関係性が深まっていく様子が描かれています。

関連作品

「月詠 MOON PHASE」には、TV未放送版も存在します。これは、最終話の26話「おにいさま、ゆらゆらきらきらどんぶらこ これって、なーんだ？」がパッケージ版DVDに収録されたもので、テレビでは放送されませんでした。このエピソードも含めて、作品全体を楽しむことができます。

主題歌・楽曲

オープニングテーマには、Dimitri From Parisが作曲した「Neko Mimi Mode」と「Tsuku Yomi Mode」が使用され、葉月役の斎藤千和が歌っています。エンディングテーマには、橋本由香利が作詞・作曲・編曲した「Pressentiment triste」と「悲しい予感」、サエキけんぞうが作詞し菊地成孔が作曲・編曲した「波のトリコになるように」、伊藤利恵子が作詞し北川勝利が作曲し桜井康史が編曲した「Just for my love」などが使用されました。また、挿入歌として「波のトリコになるように」が使用され、小川範子が歌っています。これらの楽曲は、作品の雰囲気を盛り上げる重要な要素となっています。

評価と推薦

「月詠 MOON PHASE」は、ヴァンパイアというファンタジー要素を巧みに取り入れつつ、人間関係や家族愛を描いた作品です。葉月と耕平の関係性や、葉月の母親捜しというテーマは、視聴者に深い感動を与えます。また、個性豊かなキャラクターたちが織りなすストーリーは、笑いあり涙ありのエンターテイメント性に富んでいます。

アニメーション制作を担当したシャフトの独特な作画スタイルや、新房昭之監督の演出も見逃せません。特に、葉月の可愛らしい表情や動きは、視覚的に楽しむことができます。また、音楽も作品の雰囲気を盛り上げる重要な要素であり、Dimitri From Parisや橋本由香利、菊地成孔などの才能あふれるアーティストたちが参加しています。

この作品は、ヴァンパイアものやファンタジーアニメが好きな人だけでなく、人間ドラマや家族愛を描いた作品が好きな人にもおすすめです。特に、葉月と耕平の関係性や、葉月の成長を描いたストーリーは、多くの視聴者に共感を呼びます。また、個性豊かなキャラクターたちや、シャフトの独特な作画スタイルも魅力の一つです。ぜひ一度、視聴してみてください。