煙突屋ペローの魅力と評価：独特な世界観とキャラクターの深み

『煙突屋ペロー』：昭和初期のアニメーションが描く平和への願い

■作品概要

『煙突屋ペロー』は、1930年に公開された日本のアニメーション映画で、童映社によって制作されました。監督は田中喜次で、原作も彼の手によるものです。この作品は、昭和初期の日本におけるアニメーションの発展を象徴する作品であり、戦争と平和というテーマを描いた先駆的な作品として知られています。公開メディアは劇場で、配給会社は深田商会、総分数は23分、話数は1話となっています。

■ストーリー

トム・タム国の煙突屋ペローは、ある日鳩を救ったお礼に「兵隊の出る卵」をもらいます。王子が乗る汽車が国一番の大きな街チクタク市に到着した際、ペローは好奇心から汽車を発車させてしまい、壊してしまいます。その結果、裁判で死刑の判決を受けることになります。処刑当日、ペローはこの世の見納めに煙突に登らせてもらい、そこから敵兵が攻めてくるのを見つけます。ペローは鳩からもらった卵を使って敵と戦い、トム・タム国を救います。罪を許され、郷里へ帰る途中、ペローは戦争の傷跡を目の当たりにし、その残酷さに驚きます。卵を壊し、田舎に帰ったペローは畑を耕し、平和に暮らすことを決意します。

■解説

日本のアニメーションは、北山清太郎、下山凹夫、寺内純一らの『凸坊新画帳』（1914年日活向島）、『凸凹新画帳』（1914年天活）から始まりました。昭和初期には、ミッキー・マウス、ポパイ、ベティ・ブープなどのアメリカ製アニメがヒットし、アニメ人気が高まっていきました。京都では、政岡憲三がモ呑平プロダクションを下鴨に設立（1926年）、松竹と提携して本格的なアニメの製作に乗り出しました。影絵を得意とし、芸術性豊かな政岡漫画に続いたのが、「童映社」（1929年設立）です。

昭和初期は、世界恐慌と大不況という社会不安と、それに伴うプロレタリア運動が傾向映画という形で映画界を席巻しました。また、撮影から上映、興行に至る映画的環境の全体的な向上・普及は、個人的、市民的視点さえも映画メディアに乗せることを可能とし、映画は芸術、娯楽としてだけでなく、イデオロギーや市民的メッセージさえも発信するメディアに成長していきました。そんな中、同志社の学生を中心に10名の（田中善次、中野孝夫、舟木俊一、柴田五十五郎、浅井牧夫、村上英一ら）アマチュアで組織されたのが「童映社」です。同社は約4年の間に短編影絵アニメ4作品と実写3作品を製作し、「コドモ・シネマ会」という自主上映組織まで運営し、各地で上映を行いました。童映社同人は1932（昭和7）年、J・Oスタジオの大沢善夫を説いて漫画部を組織、同社の主要メンバー入社により発展的に解散しました。童映社の第三作が約2万コマの影絵アニメ『煙突屋ペロー』（1930年）です。

田舎から都会に出てきて、煙突屋をするペローは、大好きな「汽車」を大破させたことにより死刑を宣告されますが、「兵隊の出る卵」を使うことにより自国を勝利に導き、免罪され、褒美までもらいます。彼は母の待つ故郷へ凱旋しますが、帰郷途上の車窓には、瓦礫、死体、真新しい墓標が続き、それはかつて見た田園風景とは別のものでした。彼は自国の危機に際し、強制されることなく、主体的に「卵」を使った、その責任が彼の心にのしかかります。「戦争を意識して作ったわけではありません。反戦というより、平和を願う気持ちから作ったのです」との作者の言葉通り、本作は具体的、外的意味での戦争というより、むしろ個人の心の中に戦争の芽を認識させるものです。文明、テクノロジー主導に向けシフトする時代、戦争は主人公ペローの自己実現の過程と重ね合わされて、より普遍的な「平和への願い」に昇華されました。

東京ではプロキノの上映会で委託上映され、反戦アニメとされました。1986年童映社同人宅で56年ぶりに発見されたフィルムは、ラスト1/3が切れて紛失していましたが、復元を志す同人たちのネットワーク、グループ・タックの協力で復元され、1987年10月に完成しました。

■メインスタッフ

• 原作・監督・脚本・演出：田中喜次
• 作画：中野孝夫
• 撮影：舟木俊一
• 字幕：ひら隆三
• 復元版プロデュース：伊藤正昭、沼田かずみ、田村潔
• 復元版（昭和62年）制作協力：（株）シネマ・ワーク、（株）グループ・タック
• 語り：常田富士男
• 原作・脚色：田中善次

■関連作品

• 『アリババ物語』
• 『一寸法師』

■評価と影響

『煙突屋ペロー』は、昭和初期のアニメーション作品として非常に高い評価を受けています。特に、戦争と平和というテーマを描いた点が注目され、反戦アニメとしても評価されました。作品のストーリーは、個人の心の中に戦争の芽を認識させるという点で、普遍的なメッセージを持っています。また、影絵アニメーションという技術的な面でも評価され、当時の技術水準を示す一つの指標となっています。

この作品は、童映社の活動を通じて、アマチュアによるアニメーション製作の可能性を示すものでもありました。童映社のメンバーは、後にJ・Oスタジオに参加し、さらに大きな規模でのアニメーション製作に携わるようになりました。その意味で、『煙突屋ペロー』は、日本のアニメーション史における重要な一ページを飾る作品と言えるでしょう。

■推薦ポイント

『煙突屋ペロー』は、昭和初期の日本アニメーションの歴史を知る上で欠かせない作品です。特に、戦争と平和というテーマを描いた点や、影絵アニメーションという技術的な面での評価は高く、現代のアニメファンにもぜひ見ていただきたい作品です。また、童映社の活動を通じて、アマチュアによるアニメーション製作の可能性を示すものでもあり、当時の社会背景や文化を理解する上でも重要な作品です。

この作品は、復元版としても見ることができ、当時のフィルムの美しさや技術的な工夫を感じることができます。アニメーションの歴史や技術に興味がある方、戦争と平和というテーマに興味がある方には特に推薦したい作品です。また、家族で見ることで、子供たちに平和の大切さを伝える良い機会にもなるでしょう。

■視聴方法

『煙突屋ペロー』の復元版は、DVDやオンラインストリーミングサービスで視聴することができます。また、時折開催されるアニメーション映画の上映会やイベントでも上映されることがありますので、そうした機会を利用して見るのも良いでしょう。特に、アニメーションの歴史や技術に興味がある方には、ぜひ一度見ていただきたい作品です。

■まとめ

『煙突屋ペロー』は、昭和初期の日本アニメーションの歴史を知る上で欠かせない作品であり、戦争と平和というテーマを描いた点や、影絵アニメーションという技術的な面での評価が高い作品です。童映社の活動を通じて、アマチュアによるアニメーション製作の可能性を示すものでもあり、当時の社会背景や文化を理解する上でも重要な作品です。復元版としても見ることができ、当時のフィルムの美しさや技術的な工夫を感じることができます。アニメーションの歴史や技術に興味がある方、戦争と平和というテーマに興味がある方には特に推薦したい作品です。また、家族で見ることで、子供たちに平和の大切さを伝える良い機会にもなるでしょう。ぜひ一度見ていただきたい作品です。