ジャングル大帝 劇場版1997：壮大な物語とビジュアルの再評価

ジャングル大帝 劇場版 - 手塚治虫の壮大なメッセージを描く

手塚治虫の代表作『ジャングル大帝』は、何度もアニメ化されてきた作品ですが、その中でも1997年に公開された劇場版は、原作の第三部「月光石」の物語を初めて完全に映像化した作品として特筆すべき存在です。この劇場版は、手塚治虫が描きたかった「すべての命は平等である」というテーマを、レオの自己犠牲を通じて描き出しています。

■作品概要

『ジャングル大帝 劇場版』は、1997年8月1日に公開され、松竹によって配給されました。映倫番号は114975で、99分の長さを持つ1話完結の作品です。原作は手塚治虫、監督は竹内啓雄、制作は手塚プロダクションと松竹が担当し、著作権は手塚プロダクション、松竹、「ジャングル大帝」製作委員会に帰属しています。

■ストーリー

『ジャングル大帝』の物語は、アフリカのジャングルを舞台に、白いライオンのレオがジャングルの王者として成長し、人間社会との関わりを通じてさまざまな試練を乗り越えていく姿を描いています。特にこの劇場版では、原作の第三部「月光石」のエピソードが中心となっており、レオが雪山で人間ヒゲオヤジの命を守るために自らの命を犠牲にする壮絶なクライマックスが描かれています。これは、テレビシリーズ『新ジャングル大帝 進めレオ!』ではハッピーエンドに変更されていた部分であり、手塚治虫が本来描きたかったレオの自己犠牲と「すべての命は平等である」というテーマが初めて映像化された重要なシーンです。

このテーマは、手塚治虫の他の作品『火の鳥』にも通じるものであり、レオの壮絶な死を通じて、手塚治虫の生涯のメッセージが浮かび上がってきます。アメリカで作られた『ジャングル大帝』そっくりのアニメーションでは「命の循環」がテーマとなっていましたが、手塚マンガはその「サークル・オブ・ライフ」をさらに超えた「この宇宙にはたったひとつの生命しかない。だからこそ、すべての生命は平等で尊いのだ」というテーマを見据えていました。このメッセージは、レオの物語を通じて深く描かれています。

■キャスト

この劇場版では、レオ役を津嘉山正種、ライヤ役を賠賞千恵子、ルネ役を柊美冬、ルキオ役を椎名へきる、ココ役を肝付兼太、トミー役を龍田直樹、パグーラ役を伊武雅刀、ビゾー役を鈴木蘭々、ブラッザーじいさん役を谷啓、ヒゲオヤジ役を富田耕生、メリー役を中嶋朋子、ハム・エッグ役を立川談志が演じています。また、特別出演として泉谷しげる、大槻ケンヂ、大森はじめ（東京スカパラダイスオーケストラ）、北原雅彦（東京スカパラダイスオーケストラ）、車だん吉、涼風真世、竹下景子、手塚眞、中井貴一、浜崎貴司（FLYING KIDS）、林家木久蔵、林家こぶ平、Bro.KORN（五十音順）が参加しています。

■メインスタッフ

原作は手塚治虫、監督は竹内啓雄、音楽は冨田勲、製作は松谷孝征と幸甫、企画は清水義裕、古徳稔、石田康男、プロデューサーは久保田稔、宇田川純男、秋葉千晴、脚本は竹内啓雄と手塚プロダクション文芸部、作画監督は杉野昭夫、音楽監督は東上別符精、音響監督は千葉耕市、美術監督は阿部行夫、撮影監督は玉川芳行、編集は森田清次、演出は五月女有作、吉村文宏、桑原智、絵コンテは竹内哲雄、五月女有作、吉村文宏、桑原智、西田正義、平田敏夫、樋口雅一、福富博、篠原俊哉、千葉大輔、内田裕、大下久馬、指揮は大友直人、演奏は東京交響楽団、製作協力はWOWOW、ソニー・ミュージック エンタテインメント、バンダイビジュアル、BMGジャパン、製作は手塚プロダクションと松竹が担当しています。

■メインキャラクタ

レオは、アフリカ生まれの白いライオンで、ジャングルの王者である先帝パンジャの息子です。人間社会で暮らしたのちに帰郷し、位を継ぎます。ジャングルに人間の文化を導入し、人語も話すようになります。父・パンジャと同じ王者としてジャングルを統べながら、その生き方は父とは一見対照的ですが、レオの生涯は偉大なる父の強い影響の下にあり続けました。子役としてデビューした彼は、嵐の海での遭難シーンからジャングル交響曲での指揮者、人間語を話すシーン、戦闘シーン、雪山での遭難シーンまで、動物子役から見事になんでもこなす名役者として成長しました。

ライアは、レオの妻であり、ルネとルッキオの母です。元はピグミーの村124代目の守り神リョーナの配下で、彼女の命令で白いライオン・パンジャと会うため川上へ上り、ランプらに捕らわれたところをレオに救出されました。

ルネは、レオとライヤの息子で、人間の社会に憧れ家出をします。パンジャ、レオ、ルネと親子三代にわたる壮大な物語「ジャングル大帝」の中で、人間社会と自然界の永続性との関わりという部分を担ったのが、この幼い牡ライオンです。

ルキオは、レオとライヤの娘で、名付け親はオウムのココ。「寝る」を逆にしたのが「ルネ」、そして「起きる」を逆にしたのがこの「ルッキオ」です。

■主題歌・楽曲

主題歌は「WIND SONG」で、作詞は坂元裕二、作曲と編曲は日向大介、歌は松たか子が担当しています。この曲は、レオの壮絶な物語を象徴する美しいメロディーと歌詞で、観客の心に深く響きます。

■評価と推薦

『ジャングル大帝 劇場版』は、手塚治虫の原作を忠実に再現しながらも、映像化することで新たな魅力を引き出しています。特に、レオの自己犠牲と「すべての命は平等である」というテーマは、観客に深い感動と考えさせる機会を提供します。この作品は、手塚治虫のメッセージを理解するための重要な一作であり、すべての世代に推薦できる作品です。

また、この劇場版は、手塚治虫の他の作品との関連性も深く、特に『火の鳥』との共通するテーマが見られます。手塚治虫のファンだけでなく、アニメやマンガに興味がある人、自然や生命の尊さを考えるきっかけを求めている人にも強く推薦します。

さらに、この作品は、キャストやスタッフの豪華さも特筆すべき点です。各キャラクターを演じる声優たちの演技は、物語に深みを与え、音楽や演出も一流のクオリティで、観客を引き込む力があります。特に、松たか子の歌う主題歌「WIND SONG」は、レオの物語を象徴する美しいメロディーと歌詞で、観客の心に深く響きます。

『ジャングル大帝 劇場版』は、手塚治虫の壮大なメッセージを描く作品として、永遠に語り継がれるべき一作です。ぜひ、この作品を通じて、レオの物語と手塚治虫のメッセージを感じてください。