「二匹のサンマ」レビュー：感動の物語と美しいアニメーションの融合

『二匹のサンマ』：久里洋二の実験的アニメーションの傑作

■公開メディア

劇場

■原作メディア

漫画

■公開日

1960年11月26日 ～ 0000年01月01日

■配給会社

東京・草月ホール

■話数

2話

■原作

久里洋二

■制作

・製作／久里実験漫画工房

■ストーリー

孤島に漂着した男と女（夫婦？）の単調な生活。女はサンマを焼き続ける毎日。ある日、科学者がやって来て新発明の物質生産機で物を続々造り出す。ゴールド・ラッシュみたいに人々がやって来て、島はアッという間にビル・ラッシュ。おきまりの戦争が起こり島は目茶目茶。裸になった島では生き残った元の男女が相変らずサンマを焼いている。秋山邦晴のミュージック・コンクレート風のサウンドが評判になった。
出典：「日本アニメーション映画史」山口且訓・渡辺泰共著、プラネット編　P260

■解説

久里洋二、柳原良平、真鍋博のデザイナー、漫画家など新鋭三人グループで結成された〝アニメーション三人の会〟第一回発表会(11月26日東京・草月ホール)で公開された作品。四十三年にカラーで再製作された。原作の漫画集「二匹のサンマ」(Coo.1)が三十三年に出版されている。
出典：「日本アニメーション映画史」山口且訓・渡辺泰共著、プラネット編　P260

■メインスタッフ

・製作／久里実験漫画工房
・原作／久里洋二
・動画／久里洋二
・撮影／久里洋二
・演出／久里洋二
・彩画／足立登美枝
・録画／奥山重之助
・編集／守随房子
・音楽／秋山邦晴
・音響／秋山邦晴
・詩／谷川俊太郎

『二匹のサンマ』の魅力と評価

『二匹のサンマ』は、久里洋二が手掛けた実験的なアニメーション作品であり、その独特な世界観とメッセージ性が高く評価されています。この作品は、1960年に公開され、当時としては非常に先進的なテーマと表現方法を取り入れたことで、アニメーションの可能性を広げる一助となりました。

ストーリーは、孤島に漂着した男女の単調な生活から始まります。女が毎日サンマを焼くというシンプルな日常が描かれますが、そこに科学者が現れ、新発明の物質生産機を使って物を次々と作り出すことで、物語は急展開します。人々がゴールド・ラッシュのように島に集まり、ビルが立ち並ぶようになります。しかし、その繁栄も長くは続かず、戦争が起こり、島は荒廃します。最終的には、生き残った男女が再びサンマを焼くシーンで終わります。このストーリーは、文明の発展と崩壊、そして人間の本質的な生活への回帰を象徴しています。

この作品の魅力の一つは、秋山邦晴によるミュージック・コンクレート風のサウンドです。この音楽は、当時の視聴者に強い印象を与え、作品の雰囲気を一層引き立てました。また、谷川俊太郎の詩も作品の深みを増す要素となっています。

久里洋二は、この作品を通じて、社会や文明に対する批判的な視点を表現しました。物質的な豊かさを追求することで失われるもの、そして人間の本質的な価値について考えさせられる内容となっています。これは、1960年代の日本社会が急速に経済成長を遂げる中で、多くの人々が感じていた不安や疑問を反映していると言えるでしょう。

『二匹のサンマ』の制作背景と影響

『二匹のサンマ』は、久里洋二が中心となって設立した「久里実験漫画工房」によって制作されました。この工房は、漫画やアニメーションを通じて新しい表現方法を探求することを目指しており、『二匹のサンマ』はその象徴的な作品と言えます。

また、この作品は「アニメーション三人の会」の第一回発表会で公開されました。この会は、久里洋二、柳原良平、真鍋博の三人の新鋭デザイナー・漫画家によって結成され、彼らの実験的な作品を発表する場として重要な役割を果たしました。『二匹のサンマ』は、この会の初回発表会で披露されたことで、多くの人々にその存在を知られることとなりました。

さらに、この作品は1943年にカラーで再製作され、より広範囲の視聴者にその魅力を伝えることができました。原作の漫画集「二匹のサンマ」も1933年に出版されており、久里洋二の創造性と才能が多方面で評価されています。

『二匹のサンマ』の影響は、アニメーション業界だけでなく、広く芸術や社会に対する視点にも及んでいます。この作品は、物質的な豊かさを追求することの限界と、人間の本質的な価値を問い直すきっかけを提供しました。また、ミュージック・コンクレートや詩といった異なる芸術分野との融合も、後のアニメーション作品に大きな影響を与えました。

『二匹のサンマ』の詳細なスタッフと制作過程

『二匹のサンマ』の制作には、多くの才能あふれるスタッフが関わっていました。久里洋二は、原作、動画、撮影、演出と、作品の中心的な役割を担いました。彼の多才な才能が、この作品の独特な世界観を生み出す原動力となりました。

彩画を担当した足立登美枝は、作品の色彩感覚を豊かにし、視覚的な魅力を高めました。また、録画を担当した奥山重之助、編集を担当した守随房子も、作品の完成度を高めるために重要な役割を果たしました。

音楽と音響を担当した秋山邦晴は、ミュージック・コンクレート風のサウンドを導入し、作品の雰囲気を一層引き立てました。彼の音楽は、視聴者に強い印象を与え、作品のテーマを深化させる役割を果たしました。また、詩を担当した谷川俊太郎の言葉も、作品のメッセージ性を高める要素となりました。

制作過程では、久里洋二とそのチームが、試行錯誤を重ねながら新しい表現方法を探求しました。特に、物質生産機を使ったシーンや、戦争の描写などは、当時の技術と創造性を駆使して実現されました。これらのシーンは、視覚的にも内容的にも強いインパクトを与え、作品の評価を高める要因となりました。

『二匹のサンマ』の評価と受賞歴

『二匹のサンマ』は、公開当時から高い評価を受けました。特に、作品のテーマ性と表現方法が注目され、多くの批評家や視聴者から賞賛されました。また、秋山邦晴の音楽も高く評価され、作品の成功に大きく貢献しました。

この作品は、1960年代の日本アニメーション界において、先駆的な役割を果たしました。物質的な豊かさを追求することの限界と、人間の本質的な価値を問い直す内容は、当時の社会状況を反映しており、多くの人々に共感を呼びました。また、ミュージック・コンクレートや詩との融合は、後のアニメーション作品に大きな影響を与えました。

『二匹のサンマ』は、具体的な受賞歴こそありませんが、その影響力と評価は高く、多くの研究者や批評家によって取り上げられています。特に、日本アニメーション映画史において重要な位置を占めており、久里洋二の才能と創造性が高く評価されています。

『二匹のサンマ』の推薦と視聴方法

『二匹のサンマ』は、久里洋二の実験的なアニメーション作品として、多くの人々に推薦されるべき作品です。特に、物質的な豊かさを追求することの限界と、人間の本質的な価値を問い直す内容は、現代社会においても重要なテーマとなっています。また、秋山邦晴の音楽や谷川俊太郎の詩との融合は、作品の魅力を一層引き立てています。

この作品を視聴する方法としては、以下のような手段があります。

• 映画館での上映：『二匹のサンマ』は、1960年に公開された作品であり、現在では上映される機会は少ないですが、特別上映やアニメーション映画祭などで上映されることがあります。これらの機会を利用して、スクリーンで作品を楽しむことができます。
• ビデオやDVD：『二匹のサンマ』は、ビデオやDVDとしてもリリースされています。これらのメディアを購入またはレンタルすることで、自宅で作品を視聴することができます。
• ストリーミングサービス：一部のストリーミングサービスでは、『二匹のサンマ』を視聴することができます。これらのサービスを利用することで、手軽に作品を楽しむことができます。

『二匹のサンマ』は、久里洋二の才能と創造性が詰まった作品であり、多くの人々にその魅力を伝えるべき作品です。ぜひ、この作品を視聴し、その独特な世界観とメッセージ性を感じてください。