ウィリアム・ジェームズ：人生を真剣に受け止める方法

リヴァイアサンプレス:

中国語の文脈では、「信念」と「信仰」は微妙な違いがあるように見えますが、実際にはどちらも信頼と同じ意味を持っています。ある人が強い信仰を持っていると言うとき、私たちは多くの場合、その人の人生における実践がその人の内部の自信の反映であることを意味します。言い換えれば、彼は特定の信念/確信を選択し、それを裏付ける行動を起こしたのです。この意味では、キリストの「処女懐胎」を信じるというあなたの選択は、科学を信じるというあなたの選択と根本的に異なるものではありません。この選択は、単にあなたの人生における最善の解決策であるとあなたが考えるものなのです。もちろん、何かに対して揺るぎない信念を持つことには明らかな問題があります。それは、知識の枠組みが徐々にあなたの信念を覆してしまうことです。最適解が消えたことで、再び人生の普遍的な問いに直面せざるを得なくなります。確実性は不要でしょうか?すべてを疑うのは正しいことでしょうか？しかし、信念や確信が消えてしまったら、私は自分の精神世界をどのように構築すればいいのでしょうか？ウィリアム・ジェームズについては逸話がある。彼はサセックス州ライにいる兄のヘンリー・ジェームズを訪ねていた。

この村は作家たちの隠れ家のような場所であり、HGウェルズ、ジョセフ・コンラッド、ラドヤード・キップリング、スティーブン・クレイン、フォード・マドックス・フォード、レベッカ・ウェストらが滞在したことがある。

その週末、GKチェスタートンはヘンリーの家の隣のホテルに滞在していました。当時すでに60代だったウィリアムは、若い作家に対する好奇心にあふれ、ぜひともその姿を一目見たいと思い、はしごを立てて壁越しに覗き込んだ。彼の兄は愕然とした。「ここでは誰もそんなことはしないよ！」彼は泣き叫んだ。このシーンは、ウィリアムの落ち着きのない好奇心をある程度捉えています。彼は、向こう側の世界を垣間見るために壁を乗り越えます。

私はこの逸話を、ロバート・D・リチャードソン著『ウィリアム・ジェームズ：アメリカ近代主義の渦中』という伝記の中で知りました。ジェームズは昔から私のお気に入りの哲学者であり心理学者です。しかし、この伝記を読んでから、私はジェームズの人柄と人生哲学にさらに魅了されました。

ウィリアム・ジェームズ：アメリカモダニズムの渦中において。ロバート・D・リチャードソン著。 © グッドリーズ

ジェームズは生涯にわたって鬱、不眠、神経過敏になりがちでしたが、常に楽観主義、希望、信仰、活力に基づいた人生哲学を信じていました。彼は、我々は無意味な宇宙における無力な傍観者ではないと主張している。私たちは現実の共同創造者であり、完全には理解も使用もしていない力とエネルギーを持っています。そして、どういうわけか、宇宙は私たち一人ひとりが人生にどう取り組むかを気にかけています。

40代後半になると、気性の荒い中年になりやすい。このとき、上記の人生哲学は大いに役立ち、心に留めておく価値があります。

ウィリアムと弟のヘンリー

ウィリアムは名家の家庭に生まれた。彼の父、ヘンリー・ジェームズ・シニアは、独自の宗教的探求を優先して制度化された宗教を拒否した、独特の宗教的先見の明のある人物でした。ウィリアムの弟ヘンリーは早くから小説家としてのキャリアをスタートし、若いうちに有名になりましたが、ウィリアムは気まぐれで不安定な人物でした。彼は最初、芸術家として訓練を受け、その後医学生となり、その後生理学の研究に転向し、最終的に心理学という新興分​​野に専念することを決意しました。

ウィリアム・ジェームズ（右）と彼の兄弟ヘンリー・ジェームズ。 © ichi.pro ジェームズは20代から30代前半にかけて、うつ病と自殺願望に悩まされていた。理由の一つは彼の人生哲学でした。彼は、人間の心は機械的で決定論的なプロセスの無力な奴隷であると考える、ダーウィンの唯物論的現実観を受け入れていました。私たちが行うことはすべて、結局のところ宇宙にとってはほとんど意味がありません。私たちは「動けない傍観者」です。

しかし、彼は二つのことのおかげで生きる意志を取り戻すことができました。

まず、彼は唯物論的決定論を拒否し、代わりに自由意志を信じることを選びました。 「私の最初の自由意志による行為は自由意志を信じることだ」と彼は宣言した。高密度のエネルギーを必要とする「意識」が実際には何の役にも立たないのであれば、進化論はなぜそれを残しておいたのだろうか、と彼は考えた。

彼は意識の機能についての独自の理論を展開し始めた。彼は、私たちには「意識の流れ」があり、私たちはそれを注意によって方向づけることを選択していると主張しています。意識は選択的であり、私たちに押し寄せる雑音の多い情報の中から何に焦点を当てるかを選び出します。この選択は、私たちが何を気にかけているか、何が重要だと思うかによって決まります。

そして、私たちの注意が感情や行動を駆り立てます。私たちは選択と行動を繰り返すことで習慣を作り、その習慣から世界を形作ります。

彼はこう書いている。

「私たちが感じ、生きている世界は、常に私たちの祖先や私たち自身が、彫刻家が特定の素材の特定の部分を捨て去るのと同じように、ゆっくりとした選択の積み重ねを通じて現れた世界です。別の彫刻家が同じ石から別の彫像を作り上げます！別の心は、同じ混沌から別の世界を認識するでしょう！」彼の人生を変えた2つ目の出来事は結婚したことだ。彼はためらい、ためらいながら、婚約者に奇妙で憂鬱な独身哲学者との結婚を望まないかもしれないあらゆる理由を挙げた。しかし、彼らは皆、最終的に選択、つまり信念を持って行動し、自分たちの選択と行動を通じて自分たちが住みたい世界を創ろうと決意したのです。結婚と家族生活、そしてハーバード大学での長いキャリアが、彼の落ち着きのない魂に冒険に出発する避難所を与えた。

彼は10年以上かけて『心理学原理』を執筆しました。この本は、この新興分野における最も成功した教科書となり、この分野そのものを定義するのに役立ちました。この本には興味深い考察が数多くありますが、その一つは「感情とは何か？」という質問に対するジェームズの答えです。

これに対するストア派/CBT の答えは、感情は認知的判断であるということです。たとえば、誰かが私たちに向かってしかめっ面をしているのを見ると（A）、私たちはそれを「彼女は私を嫌っている」（B）という思考で解釈し、それが感情の身体的な感覚（C）につながります。エピクテトスはこう言っています。「私たちに苦痛を与えるのは出来事ではなく、それに対する私たちの見方である。」

ジェームズはその見解を覆した。彼は感情は認知的判断ではなく身体的な反応であると信じていました。私たちはクマを見ると（A）、体が反応して闘争・逃走反応を起こし（C）、叫びながら逃げるときに心が追いついて「怖い」（B）と気づきます。

どちらの見解が正しいでしょうか?それはすべて本当です。それらはすべて、感情をコントロールし、精神的苦痛を癒す効果的な方法を提供します。時には、信念を変えることで癒されることもあります。ジェームズが自由意志についての信念を変えたのと同じです。時には、私たちは自分の体を使って感情や精神状態を調節することができます。ジェームズは感情を癒すための物理的なテクニックに魅了され、「リラクゼーションの福音」という本を執筆しました。

彼は成長するにつれ、宗教、精神性、代替療法、心理学の研究にますます興味を持つようになりました。彼は、宗教的信仰とテクノロジーがどのように人々を癒し、生活の質を向上させることができるかに興味を持っています。たとえば、彼は 19 世紀のマインド キュアとニューソート運動 (今日では引き寄せの法則と呼ばれています) がアメリカ全土に広がるのを見て、その運動に魅了されました。それは、人々が体をリラックスさせ、心を開き、どこから来るのかという信仰と希望の奔流を歓迎するのに役立ちます。これは彼らの「潜在意識」から来るものかもしれないし、あるいは神から来るものかもしれない。

結局のところ、エネルギーがどこから来たのかは問題ではなかったのかもしれません。重要なのは、それがうまく機能しているように見えたということである。「医療精神運動は、単なる宣言や主張によって広まったのではなく、その驚くべき実証的結果によって広まったのです。」

このことがきっかけで、ジェームズは宗教的、精神的な信念を実際的に擁護するようになりました。宇宙があなたのことを気にかけているかのように行動し、あなたの信仰が自己実現的で人生を豊かにする予言になるようにします。

時には、まるで『ザ・シークレット』や『思考は現実化する』のようにも聞こえ、ジェームズは確かに初期のニューソート運動に理論的裏付けを与えました（ただし、初期の運動は後のニューソート運動ほど粗野な唯物論的ではなかったと言わざるを得ません）。

しかし、ジェームズの人生哲学と『ザ・シークレット』の間には重要な違いがあります。まず、ジェームズは行動の重要性を強調しました。ただ部屋に座って前向きな考えを抱き、魔法のように成功が実現することを期待することはできません。私たちの現実は、私たちの思考と行動を通じて共に創造されます。第二に、彼には「有害なポジティブさ」という概念を持ち出すという先見の明がなかった。彼は悪、苦しみ、そして精神的な絶望の本質について深い認識を持っていました。

彼の最も有名な著書『宗教的経験の諸相』では、彼は動物学者のように宗教的経験にアプローチし、神秘的な野生動物の庭のように宗教的経験のさまざまな記述を収集し、それらを分類しようとしました。

彼が定義したタイプの 1 つは、ウォルト・ホイットマンやナポレオン・ヒルのような、常に楽観的で明るく、世の中に否定的なものを一切見ない人々に代表される「健全な精神の宗教」でした。これは私にサンデー・アセンブリーを思い出させます。私の友人サンダーソン・ジョーンズは、この「健全な心の宗教」の体現者です（訳者注：サンダーソン・ジョーンズはイギリスのコメディアンで、「サンデー・アセンブリー」は彼が設立した無神論団体です）。

サンダーソン・ジョーンズは世俗教会の日曜集会でこう語った。「人生は美しい。それを祝いましょう。」そして、「自分と宇宙に何か問題がある」という深い思いを抱いている「病んだ魂」がいました。ジェームズはこの宗教的態度を次のように要約しました。「私を救ってください！私を救ってください！」最終的に、病んだ魂がどん底に落ちたとき、彼らは努力することをあきらめ、何らかのより高い力の慈悲に屈します。すると、奇跡的に「救いの恵み」が流れ始めたように思えました。それは神から来るものかもしれないし、潜在意識から来るものかもしれない。私たちには分かりませんが、「成果」を判断することはでき、宗教体験は一般的に人々をより健康に、より精力的に、より生き生きとさせると言えます。

この理論はビル・ウィルソンにアルコール中毒者匿名会を設立するきっかけを与えました。ウィルソン自身も宗教体験によって救われた経験があり、後に『さまざまな宗教体験』のコピーを受け取り、たとえキリスト教徒でなくても、あるいは神を信じていなくても、中毒者たちに「より高い力に身を委ねる」よう促すプログラムを立ち上げることができると確信した。アルコホーリクス・アノニマスの 12 ステップ プログラムから恩恵を受けた人が何人いるかは分かりませんが、何億人でしょうか?

ジェームズの『宗教的経験の諸相』での比較方法、つまり、異なる宗教的伝統と無宗教の伝統に属する人々の個人的な体験談をいくつか比較し、類似点を指摘する方法は、「スピリチュアルだが宗教的ではない」コミュニティに刺激を与え、こうしたコミュニティは、これらすべての異なる信念と体験は、究極の一つの現実を指し示しているとしばしば主張している。

ジェームズは友人でありハーバード大学の哲学者でもあるジョサイア・ロイスと討論した。どうやら、ジェームズが「クソったれ絶対主義者ども！」と叫んでいるところがカメラに捉えられたようだ。ジェームズは永遠主義者というよりはむしろ多元主義者である。人間の経験（神秘的な経験も含む）をシステムに当てはめようとするたびに、必ず何かが抜け落ちてしまいます。ジェームズの体系にも独自の偏見があり、彼は集団的な宗教体験をすべて無視しています。

したがって、心理学や哲学では明確な結論に達することは困難です。宗教的経験は、唯一の神、中心となる神秘的な経験を指し示しているのでしょうか?そうではないかもしれない。なぜ現実は「一つ」であるべきなのでしょうか?おそらく、神は複数存在し、宇宙も複数存在する（彼は「マルチバース」という用語を作り出した）。おそらく、宗教体験は至高の存在とのつながりではなく、単に私たち自身の知性よりも高次の知性とのつながりなのでしょう。彼はこう書いている。

「私は、人間の経験が宇宙に存在する経験の最高の形であるとは信じていません。しかし、猫や犬が人類全体の生命に対して立っているのと同じように、私たちは宇宙に対して立っていると信じています。猫や犬は私たちの居間や書斎に住み、その重要性を理解せずに私たちの活動に参加しています...私たちはすべてのもののより大きな生命に対する単なる接線です。」もちろん...もしそうだとしたら、私たちは宇宙にとって究極的には重要ではないのかもしれません。しかし、犬にとっては、その犬が住む家が重要なのです。

いずれにせよ、私たちは現実の描写についてあまり急いで結論を出すべきではありません。私たちは理解において謙虚であり続けるべきです。ジェームズは常に例外、不適合者、部外者、弱者に共感していた。おそらくそれが、多くの友人が優生学を支持していたにもかかわらず、彼が優生学を支持しなかった理由だろう。彼は、「退化」などの疑似科学用語を他人を攻撃するための「棍棒」として使う邪悪な医師たちに懐疑的だ。

ジェームズはうつ病とパニック発作に悩まされ、狂人と正気人の間には明確な境界線がないことに気付き、患者に同情するようになった。実際、彼は収入の20％を慈善事業に寄付しており、その中には友人のクリフォード・ビアーズが始めた患者主導のメンタルヘルスケア改革運動も含まれている。ビアーズ氏はかつて精神病院に入院しており、虐待を受けた経験について書いたことがある。

ジェームズは最終的に何を信じたのでしょうか?彼には究極の信仰がない。人生はプロセスであり、旅であり、探求であり、彼は決して決定的で不変の物語を語ったり、長い間一つの答えにとどまったりはしない。彼は常に新しい影響やアイデアを受け入れており、古い習慣に固執することには慎重です (この傾向は通常 25 歳前後から始まると彼は考えています)。

例えば、彼は友人のベンジャミン・ブラッドの奇妙な考えに耳を傾けていました。ブラッドは笑気ガスに関する本『麻酔の啓示』を執筆し、その中で笑気ガスを通して真に宗教的な体験をしたと主張した。ジェームズは自分でガスを試し、後に有名な言葉を書いた。

「私たちの通常の覚醒意識は、ある特定のタイプの意識に過ぎません。その周囲には、ごくわずかな障壁によって隔てられた、まったく別の潜在的な意識形態が存在します。」トランス、空想、夢、エクスタシーといった他の意識状態にも適応機能があります。ジェームズはそう主張していますが、ほとんどの心理学者や精神科医は、神秘的な体験は精神疾患の証拠であると主張しています。彼は死の前年の1909年にフロイトとユングに出会った。彼はフロイトの考えは少々堅苦しいと考えていたが、宗教的経験の価値というテーマに関しては、フロイトの若い信奉者（ユングのこと）の方が親しみやすいと感じた。当然、この問題に関してユングとフロイトとの意見の相違はますます大きくなっていった。

おそらく、ジェームズの「過剰な信仰」とは、私たちの心が何らかの「宇宙意識」とつながっているという信念であると定義できるでしょう。私たちの意識は群島の中の島々のようなもので、潜在的には互いに、そして何らかのより高次の慈悲深い力とつながっています。もしかしたら私たちの魂は死後も生き続けるかもしれないが、確かなことは分からない。しかし、ここ地球上では、私たちは最善を尽くし、未開発のエネルギーと力を最大限に活用し、私たちの行動が宇宙にとって重要であるかのように行動するよう努めることができます。

これを読んで、ハイドパークを散歩して、クリスチャンであることがどのようなことかを思い出しました（私は2013年に約1年間、クリスチャンになろうと努力しました）。神が存在すると信じていたときの気持ちを覚えています。神は私と私の生き方を気にかけてくれる慈悲深い偉大な力です。これは私に信じられないほどのエネルギーを与えてくれます。実際、私の人生経験のいくつかは、私にとってこの信念を裏付けるものでした。自分がだんだん冷笑的になってきていると感じるとき、私はこのことを自分に思い出させる必要があります。

ジェームズの哲学は完璧ではありません。あまりにも個人主義的で、安心するには『ザ・シークレット』のような本に少し近すぎるのです。しかし、それは非常に重要で元気づけられることを言っています。それは、私たちの行動が宇宙（または神）にとって重要であるかのように、私たちの可能性を最大限に発揮するよう努めることです。これが実際に当てはまるかどうかはわかりません。しかし、私たちはその信念に基づいて行動することができます。

リチャードソンのジェームズに対する尊敬の念は、彼の伝記の最後で明らかである。 「この男は信じられないほど熱い魂を持っている！」彼は書いた。ジェームズが「宗教的経験の諸相」シリーズの最後の講義を終えたとき、エディンバラ大学の聴衆は「彼は陽気な善人だ」を自然発生的に合唱し始めたと彼は語っています。みんなそう言うよ。

ジュールス・エヴァンス

翻訳者：クシャン

校正/ウサギの軽い足音

オリジナル記事/julesevans.medium.com/william-james-on-living-life-as-if-it-mattered-52db7f18471b

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、KushanによってLeviathanに掲載されています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。