「加齢臭」は存在するのか？高齢者には特別な匂いがあるのでしょうか？

リヴァイアサンプレス:

高齢者が住む場所では、換気されていない空気に油やカビ臭が混じった一種の「加齢臭」を感じたことがある人が多いと推定されます。これは、高齢者は運動機能が低下しているために入浴回数が減っていることに関係していると考える人もいれば、寝具や枕カバーを長期間洗っていないことが原因だと考える人もいます。しかし、いずれにしても、その香りを良いと表現するのは少し難しいです。

しかし、今日の記事は「加齢臭」について別の視点を提示し、これまでの印象を変えるかもしれません。

昨年、長期旅行中に、夫と私はオザーク山脈にある自宅を、自宅を改築中だった老夫婦に貸しました。

1ヵ月後に私たちが戻ると、家はきれいに掃除されていて、夫婦からの贈り物が2つありました。しかし、空気中には独特の匂いも漂っていた。それは、箱を開けた時に感じる、少しかび臭いような、古くなって少し甘い匂いだった。

カウンタートップを拭き、床をモップで拭きましたが、臭いは残っていました。特にひどいというわけではありませんでしたが、奇妙で少し不快でした。夜遅く、私は罪悪感を感じながらインターネットで検索しました。「老人は臭いのか？」

「私が見つけた答えは、イエス、ノー、そして多分...」

私は40歳から70歳までの女性作家のグループに質問を送ったが、回答には大きな違いがあった。若い女性は、確かに加齢に伴う臭いはあると答えました。しかし、年配の女性にとっては、年齢差別的に聞こえる可能性があり、気分を害する人もいます。

52 歳の私は、この点については少し敏感ですが、実際の情報も得る必要があります。今そして将来、自分の匂いを改善するために何かできることがあれば、知りたいです。そこで私は有名な研究室の科学者2人に相談したところ、まったく同じ意見の相違に遭遇しました。

モネル化学研究センターの46歳の生物学者、ヨハン・ルンドストロム氏は、自身の研究が2001年に日本の研究者が発見した事実を裏付けていると語った[1]。2-ノネナールと呼ばれる不飽和アルデヒドは高齢者の皮膚に多く蓄積され、独特のイリス根やワックスのような、あるいは油のような臭いを発することが多い。

©レディット

彼の研究は規模は小さいものの、20歳から95歳までの人々の脇の下のサンプルを使用し、それを41人の参加者に提示して、臭いの強さと不快感を順位付けするよう依頼した。[2]さらに、ランドストロム博士と共著者らは、「参加者は高齢のドナーの体臭を古いものと正しく分類できたが、他の年齢層のドナーの体臭を古いものと分類できなかった」ことを発見した。

しかし、同じくモネル大学の有機分析化学者であるジョージ・プレティ氏（74歳）は、自分の研究結果は日本のグループやランドストロム博士のチームの研究結果とは一致しなかったと述べた。[3]プレティ博士のチームは背中上部と前腕から採取したサンプルをガスクロマトグラフィーと質量分析にかけ、「いかなる分析法でも」高齢者の体内に2-ノネナールが存在することは示されなかったと結論付けた。

「実は高齢者は若い人よりも体臭が少ないのです」とプリティー博士は言う。 「衛生上の問題があるかもしれない老人ホームに行かない限り、誰もが話題にしているこのカビ臭くて不快な臭いを感じることはないでしょう。」

「ジョージがあなたに言ったことは分かっていますが、彼は間違っています。彼の研究範囲は狭すぎます。彼は年上なので、そのテーマに対してより敏感なだけです」とランドストロム博士は半ば冗談めかして言った。

一般的に研究によると、二重盲検の「嗅覚テスト」では、中年男性の体臭は若者や高齢者のサンプルよりも最悪で不快であると考えられています（私たちの懸念にもかかわらず、中年女性の体臭は最も良いです）。これは化学分析によっても確認されており、非常に若い人や高齢者では皮脂分泌レベルが低いことが分かっています[4]。

ランドストロム博士の研究は「加齢臭」の存在を確認したが、被験者は概してその臭いを「中立的」かつ「不快ではない」と感じていたとも指摘した。匂いがネガティブに感じられる主な理由は環境によるものだと彼は考えています。ランドストロム博士は、この匂いは新鮮な肥料の匂いに少し似ていると語り、厩舎で嗅ぐと自然な匂いとして感じられるという。しかし、寝室でその匂いがすると、気分が悪くなり、不快になることがあります。

「日本の研究では、研究者が被験者に臭いの発生源を告げなかった場合、被験者はそれを『無害』と評価した」とランドストロム博士は述べた。「しかし、臭いが高齢者から来ていると言うと、『不快』と評価された」

© コニカミノルタ

日本ではこの偏見が顕著です。彼らは老人の匂いに「加齢臭」という名前を付けましたが、これには明らかに否定的な関連性があります。ミライクリニカルという日本の会社は、この「不快な」臭いを除去すると謳う柿エキス入り石鹸を16ドルで販売している。

プリティー博士は、2001 年の研究結果の科学的妥当性に納得していない。 「日本の研究が発表されたとき、私は57歳だったが、かなり傷ついたことを覚えている」と彼は語った。 「彼らは、サンプル調査した『高齢者』グループに40代の人を含めた。馬鹿げている。」

ランドストロム博士は、日本の研究結果には同意する一方で、加齢臭をめぐる業界には警戒している。高価なクリームや石鹸は問題の解決策ではないと彼は言う。

「嗅覚は潜在意識に深く関わっている」とランドストロム博士は言う。「だから、嗅覚を隠しても意味がない。それぞれの香りは鼻の中の特定の化学受容体に結合し、強い香水であっても、そのメッセージは伝わるのだ」

そこで彼は、高齢の両親に、活動的な生活を送り、定期的に家の換気をし、たとえ汚れて見えなくても寝具や衣類を定期的に洗濯するようアドバイスしている。遺伝や全体的な健康状態など、他の要因を制御することはより困難です。

プリティ博士は、高齢者は若者よりも体臭が少なく、体臭も少ないと固く信じているにもかかわらず、多くの点で同様の提案をしている。

© ディスカバーマガジン

科学者たちは、慢性疾患を患っている人は年齢に関係なく体臭が強くなる可能性が高いことに同意しています。プリティー博士はこの現象を食生活、代謝、セルフケアに起因するものとしている一方、ランドストロム博士は、細胞の衰退につながる継続的な炎症に関連している可能性があると考えており、その可能性を調査している。

「はい、それは実際にある程度は理にかなっています」と、プリティー博士はランドストロム博士の理論を聞いて愛想よく言った。 「炎症性疾患については議論しませんでしたが、私の研究に参加した被験者全員が健康状態は良好であると報告しました。」

両研究者は、人間の嗅覚は加齢とともに弱まる傾向があるため、手で口を覆って息を吸ったり、脇の下を嗅いだりするなどの自己監視は、通常70歳前後で機能しなくなると指摘している。

© IFLScience

「健康な80歳の人は健康な30歳の人よりも体臭が少ないと私は信じています」とプリティー医師は続けた。「しかし、いったん病気になると、状況は複雑になります。信じてください、私は脳卒中を何度も起こした人を診てきましたが、それはまったく別の話です。」

2-ノネナールとその近縁物質であるノナナールは、どちらも 1920 年代に発見されたアルデヒド化合物です。それ以来、香水や食品業界で広く使用されるようになりました。

「香水業界では、高齢者の肌にもノナナールが見つかります。これはC-9アルデヒドとして知られ、シャネルNo.5の素晴らしい成分です」と、香水コンサルタントで、インターナショナル・フレーバーズ＆フレグランスの元副社長兼香料科学研究ディレクターのクレイグ・ウォーレン氏は言う。

© シニアプラネット

「日本人の体内にはアメリカ人よりも多くのアルデヒドが含まれている可能性がある」と彼は語った。 「でも、私はもうすぐ80歳で、生涯嗅覚を研究してきました。もし誰かが私に、ある特定の匂いがすると言ったとしても、私は怒らないでしょう。それについて何かしたいと思うでしょう。」 （プリティー博士はまた、日本人被験者は魚をよく食べるため、ノナナール濃度が高かった可能性もあると指摘した。）

新しい臭気マスキング方法が解決策となるかもしれない。ウォーレン氏は、イリノイ州のベル・エア・クリエーションズ社と協力し、化学マスキング製品と独特の香りを持つ物質を組み合わせて、揮発性のない大きな分子を形成する技術を開発した。つまり、表面から空気中に蒸発しなくなるということだ。

「ノナナールはこのマスキング技術に最適な候補だ」とウォーレン氏は語った。 「しかし、私が知る限り、この臭いを消す製品を求める人は誰もいません。市場にはそのようなニーズがないのです。」

ウォーレン博士は、この問題はアメリカ企業にとって敏感すぎるかもしれないと述べた。女性用衛生スプレーのメーカーは性差別に関する苦情を受けており、健康・美容企業は高齢の消費者を怒らせることを警戒しているのかもしれない。

今のところ、加齢臭と戦うための最善のアドバイスは、自分自身と家のケアをすることです。運動し、健康を維持し、水分を補給し、きれいな食べ物を食べ、換気のために窓を開け、衣類やシーツを洗濯してください。

これについてはあまり心配しないでください。

最近、私の家に泊まっていた老夫婦を訪ね、忘れてきたものを返すために行きました。彼らはお茶を淹れてくれました。私たちが話していると、同じ古びた、少し甘いカビ臭い匂いが漂ってきました。しかし、私は彼らの居心地の良い、枕がいっぱいのリビングルームで場違いな感じはしませんでした。

環境。この点に関しては、ランドストロム博士が正しいと思います。

参考文献:

[1]pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11286617/[2]pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22666457/[3]www.ncbi.nlm.nih.go v/pmc/articles/PMC2574753/[4]journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0038110

アン・バウアー著

翻訳者：tim

校正/タミヤ2

オリジナル記事/www.nytimes.com/2019/08/08/well/live/do-older-people-have-a-different-smell.html

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、timによってLeviathanに掲載されています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。