『いばらの王 -King of Thorn-』:未来への希望と絶望の狭間で
『いばらの王 -King of Thorn-』は、岩原裕二による同名の漫画を原作としたアニメ映画であり、2010年5月1日に公開されました。この作品は、未来への希望と絶望が交錯する中で、生き残りをかけた人々のドラマを描いています。以下では、この作品の詳細な情報と評価、そしておすすめポイントを紹介します。
ストーリー
物語の舞台は、現代から少し先の未来。感染すると60日以内に石化し、死に至らしめる致死率100%の奇病「メドゥーサ」が世界中に蔓延しています。この不治の病の治療法を求めて、コールドスリープ(CS)の実用化が発表されました。世界でたった160人のCS資格者に選ばれた少女カスミは、スコットランドの古城に造られたコールドスリープカプセルセンター(CSCC)で、いつまでとも知れぬ眠りにつきます。自分と同じくメドゥーサに感染しながら選考に漏れた双子の姉シズクとの再会を夢見ながら。しかし、未来を求める眠りは突然中断され、覚醒したカスミの眼前に現れたのは変わり果てた施設の有り様でした。童話「いばら姫」さながらイバラに覆われたセンターの中で、異形のモンスターに襲われて、絶命していく資格者たち。何故モンスターたちが? あれから何十年、何百年が過ぎたのか? 外界の状況は? メドゥーサの治療法は? 全ての情報が遮断された極限の状況下で、生き残りを賭けたカスミたち7人の脱出が今、はじまる……。
解説
2006年の企画立ち上げから丸4年。世界各国で熱狂的な支持を受けながら、アニメ化不可能といわれたコミック「いばらの王」の映画化が遂に実現しました。本プロジェクトのため集結したのは、アニメーション表現の可能性を革新し続けてきたサンライズの『スチームボーイ』『FREEDOM』チームです。監督は『THEビッグオー』の監督を担当し、『FREEDOM』で絵コンテ、演出を手掛け、国内外で高い評価を博している片山一良。CG監督に『新SOS大東京探検隊』『スチームボーイ』の中島智成、美術監督に同じく『スチームボーイ』と『鉄コン筋クリート』の中村豪希を抜擢し、綿密かつ躍動感溢れる映像が実現しました。さらに『新世紀エヴァンゲリオン』『青の六号』の山口宏が片山監督との共同脚本を執筆する他、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』『サクラ大戦』『ああっ女神さまっ』の松原秀典がキャラクターデザイン、『劇場版機動戦士Zガンダム』の恩田尚之が総作画監督、S.I.C.原型師として大活躍する安藤賢司がモンスターデザイン、『カウボーイビバップ』『機動戦士ガンダムSEED』の山根公利がメカニックデザイン、同じく『機動戦士ガンダムSEED』の佐橋俊彦が音楽を担当しました。まさに次世代アニメーションの名に相応しい最高峰の技術と才能が火花を散らす作品となりました。
今作のテーマは、新たなるディケイドの幕開けに相応しい「2Dと3Dのハイブリッドな融合」です。『スチームボーイ』で頂点を極めた手描きの作画技術と、『FREEDOM』で世界を驚愕させた3DCG技術をシームレスに融合。その結果、総作画数約8万枚ながら、歴代1位『スチームボーイ』の18万枚、2位『崖の上のポニョ』の17万枚を超える、約20万枚分に匹敵するダイナミックかつ滑らかな映像美を実現しました。加速する血の鳴動まで精細に伝える奇跡のアニメーションが今、あなたの眼の前に降臨します。
またエンディング主題歌はMISIAの「EDGE OF THIS WORLD」です。作品のメッセージからインスピレーションを受け、MISIA本人が書き下ろした同曲。切なく美しいバラード調で始まり変幻自在に装いを変える、MISIAにしか表現し得ない壮大な楽曲と、愛と祈りに満ち溢れた最高のパフォーマンスとが映画の感動を後押しします。
キャスト
- カスミ:花澤香菜
- マルコ:森川智之
- シズク:仙台エリ
- キャサリン:大原さやか
- ティム:矢島晶子
- ロン:乃村健次
- ピーター:三木眞一郎
- ペッチノ:廣田行生
- ローラ:川澄綾子
- アリス:久野美咲
- ヴェガ:磯部勉
メインスタッフ
- 製作:川城和実、内田健二、森好正、椎名保、田村明彦、髙田佳夫、毛塚善文
- 原作:岩原裕二(掲載「月刊コミックビーム」(エンダーブレイン刊))
- 脚本:山口宏、片山一良
- キャラクターデザイン:松原秀典
- モンスターデザイン:安藤賢司
- メカニックデザイン:山根公利
- 総作画監督:恩田尚之
- エフェクト作画監督:橋本敬史
- 美術監督:中村豪希
- CG監督:中島智成
- 色彩設計:中内照美
- 撮影監督:佐藤光洋
- 編集:掛須秀一
- 音楽:佐橋俊彦
- 音響監修:鶴岡陽太
- 絵コンテ:片山一良、須永司
- 演出:遠藤広隆、内田信吾
- 作画監督:吉岡毅、牧孝雄、鈴木竜也、千葉崇洋、堀内博之、松田勝巳、川名久美子、岩田幸大、原田大基、滝口禎一、野口寛明、末永宏一
- 原画:入江篤、猪瀬富士夫、伊本龍守、原田大基、山野雅明、小松原聖、阿部邦博、石原恵治、加藤やすひさ、高津理、村田充範、木村貴宏、細越裕治、光田史亮、斎藤久、小船井充、寺岡厳、横堀久雄、岩田幸大、重田敦司、重田智、ふくだのりゆき、小菅洋、中矢雅樹、中島利洋、高瀬健一、安彦英二、田頭真理恵、神谷智大、鈴木幸江、橋本貴吉、近有希、橋本浩一、柳沼和良、矢上孝一、加藤リホコ、清水義治、清水保行、森下博光、吉田夫美子、野間勇輔、談議祐子、中山由美、坂本修司、前田清明、松田宗一郎、阿部純子、後藤圭ニ、村瀬修功、橋本敬史、牧孝雄、千葉崇洋、堀内博之、松田勝巳、市川敬三、稲吉智重、有澤寛、平沢祐子、加瀬孝治、佐光幸恵、工藤誉寿治、金田雅彦、山元浩、西澤真也、小見戸幸代、長谷川文香、宮暁、小野隆志、小島崇史、室田雄平、板垣徳宏、岩崎成希、渡部里美、豊田暁子、安部久美子、三橋桜子、鈴木美香、愛敬由紀子、木村智、佐原弘美、藤原麻記子、飯田恵理子、大浦藍子、金南斐、宇田早輝子、東賢太郎、片岡正博、スタジオ九魔、オズインク、ゆめ太カンパニー、アニメトロトロ、スタジオライブ、スタジオライン、スタジオエル、ウォンバット、アニメアール、C-Station、スタジオギムレット、UNION・CHO、Triple A
メインキャラクタ
- カスミ・イシキ
- 国籍:日本国
- 年齢:15歳
- 職業:高校生
- 内向的な女子高生。世界規模の奇病メドゥーサに両親を奪われたあと、一卵性双生児の姉シズクと共に肩を寄せ合って暮らしていた。メドゥーサに感染後、2人で世界で160人だけが選ばれるコールドスリープに応募するが、自分だけが当選。姉を差し置いて生き残ることに引け目を感じている。インジケーターブレスレットの識別コードはKHM050。
- 過去の出来事:二人の関係を決定付けたのは子供のころの事故。間一髪で姉シズクにかばわれた妹カスミは無傷だったが、代わりにシズクは足に消えない傷を負う。これをきっかけに、カスミはシズクの影となって生きることを決意し、またシズクはカスミに心配をかけないよう気丈に振舞いながら生きようと決めた。
- シズク・イシキ
- 国籍:日本国
- 年齢:15歳
- 職業:高校生
- 双子の妹カスミとは反対に、外交的でテキパキした性格。共にメドゥーサに感染したカスミがコールドスリープ施設入所の権利を得ながら、一人で生き残ることに引け目を感じていることを心配し、遠路、施設まで随行する。迫りくる死を避けられない状況にありながら、常に前向きで優しくカスミを励ます。右足に大きな傷跡がある。
- 過去の出来事:二人の関係を決定付けたのは子供のころの事故。間一髪で姉シズクにかばわれた妹カスミは無傷だったが、代わりにシズクは足に消えない傷を負う。これをきっかけに、カスミはシズクの影となって生きることを決意し、またシズクはカスミに心配をかけないよう気丈に振舞いながら生きようと決めた。
- マルコ・オーエン
- 国籍:グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国
- 年齢:24歳
- 職業:囚人
- 全身にタトゥを入れた粗暴で屈強な男。コールドスリープに当選し、刑務所から護送されてきた。妹のローラを失って以来、メドゥーサを利用しようとする人間たちへの憎悪を燃やす彼は、施設の惨事に乗じて、ある行動を起こしていく…。
- ローラ・オーエン
- 国籍:グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国
- 年齢:19歳(死亡当時)
- 職業:大学生
- 兄のマルコと違って優秀で将来を期待されていた妹。だがメドゥーサに感染したことから、離れて暮らす兄の説得も虚しく、3年前に留学先のニューヨークで投身自殺した。そんな彼女の死が、それまで各国政府がひた隠しにしてきた奇病「メドゥーサ」の存在を世間に気づかせた最初の事例となった。
- ロン・ポートマン
- 国籍:アメリカ合衆国
- 年齢:28歳
- 職業:警察官
- 背中に銃痕があるコールドスリープ資格者。もとはアメリカ西海岸の有能な警官。強い正義感・責任感と鍛えられた肉体を誇るものの、ここ数年はデスクワークばかりだった。法を守る職に就いていたことから、チンピラのマルコと衝突することもしばしば。
- 過去の出来事:過去、追い詰めた凶悪犯が小さな子供だったことに戸惑った隙に、同僚の親友が射殺され、自分も背中を撃たれた経験を持つ。辛くも犯人を射殺するも「子供を虐殺した警官」と大騒ぎするマスコミのせいで現場を外されたことから、大のマスコミ嫌いになっている。
- キャサリン・ターナー
- 国籍:オーストラリア連邦
- 年齢:30歳
- 職業:看護士
- コールドスリープ施設に向かうバスの中で童話「いばら姫」を読みふけっている女性。落ち着いた雰囲気を漂わせ、自分の息子への想いからか幼いティムを可愛がるが、時折豹変し、ヒステリックな接し方になってしまう。
- 過去の出来事:学生時代の恋愛で一児をもうけたが大学卒業後、夫とのすれ違いばかりの生活に。その苛立ちが子供への家庭内暴力に変わり、親権を奪われた。愛息お気に入りの「いばら姫」を読み聞かせた幸せな時代の記憶に苛まれている。
- ティモシー・レイゼンバッハ
- 国籍:ドイツ連邦共和国
- 年齢:8歳
- 職業:小学生
- 愛称ティム。両親の愛に恵まれずに育つ。弁護士による代行応募でコールドスリープに当選。無邪気だが、ゲーム機を片時も手放さず、人の生死すらゲームのように物事を捉える一面が垣間見える。施設の惨事のあと、キャサリンを自分の母のように慕う。なぜか城内を蠢く奇獣たちの性質を知りつくしている。
- 過去の出来事:家庭不和の原因は自分の存在にある……そんな現実から目を背けるため、ひとりゲームに耽溺するが、両親の怒りはますますエスカレートしていく。その結果、両親と離れ施設で暮らすようになる。好きな世界に耽ることの快感と、現実から目をそらす罪悪感を、幼いながら無意識に感じている。
- アレッサンドロ・ペッチノ
- 国籍:イタリア共和国
- 年齢:59歳
- 職業:政治家
- ヴィナスゲイトの大口スポンサーとなることでコールドスリープの権利を金で買い上げた、イタリアの大物上院議員。施設の惨事のあとも尊大で口数が多く、金銭や生きることへの執着が強い。反面、自分の汚職を恥じた弟の自殺に悩まされていた。
- ピーター・スティーブンス
- 国籍:アメリカ合衆国
- 年齢:33歳
- 職業:技師
- コールドスリープセンターの惨事のあと、カスミたちと共に脱出を図る生き残りの一人。なぜか城の内部構造に精通している他、出会えるはずのない場所でカスミに出会った、と不可解な発言も……。
- アイヴァン・コラル・ヴェガ
- 国籍:ロシア連邦
- 年齢:45歳
- 職業:化学メーカーCEO
- 化学メーカー、ヴィナスゲイトのCEO。かつてロシア内務省科学事件担当一等捜査官だったが、ある重要機密を握ったことで変貌。自身の壮大な目的のため、カルト教団を資金集めに利用し、その力をバックに、一気にヴィナスゲイトのトップに上り詰めた。技術の粋を駆使して最新鋭コールドスリープシステムセンターを開発し、資格者を募った。
- ウォルター
- 国籍:アメリカ合衆国
- 年齢:不明
- 職業:NSA局員
- NSA(国家安全保障局)のエリート。カルト思想を基にバイオテロを目論む組織としてヴィナスゲイトをマーク。また同社CEOのヴェガがメドゥーサ研究に従事しても感染していないことから、特効薬を開発し、隠し持っている可能性が高いとみている。アメリカ大統領の死の直後、コールドスリープカプセルセンターを制圧する米英合同の作戦「スリーピングビューティー」を発動させる。この作戦の先鋒として、とある志願兵をコールドスリープ資格者に偽装させ施設に送り込んだ。
主題歌・楽曲
- TM1
- EDGE OF THIS WORLD
- 作詞:MISIA
- 作曲:Sinkiroh
- 編曲:Gomi
- 歌:MISIA
評価とおすすめポイント
『いばらの王 -King of Thorn-』は、その壮大なストーリーと美しい映像表現が評価されています。以下では、具体的な評価ポイントとおすすめポイントを紹介します。
評価ポイント
1. ストーリーの深み
本作のストーリーは、未来への希望と絶望が交錯する中で、生き残りをかけた人々のドラマを描いています。特に、カスミとシズクの姉妹愛や、マルコの復讐心、ティムの無邪気さと裏腹の深い闇など、各キャラクターの背景が丁寧に描かれており、視聴者を引き込む力があります。また、メドゥーサという不治の病をテーマにすることで、生命の尊さや人間の業を問いかける深遠なテーマも含んでいます。
2. 映像表現の革新
本作は、2Dと3Dのハイブリッドな融合をテーマにしており、手描きの作画技術と3DCG技術をシームレスに組み合わせた映像美が特徴です。総作画数約8万枚ながら、約20万枚分に匹敵するダイナミックかつ滑らかな映像を実現しており、視覚的なインパクトが強いです。特に、モンスターのデザインや戦闘シーンの迫力は見事で、視聴者を圧倒します。
3. 音楽と主題歌
佐橋俊彦による音楽は、物語の緊張感や悲壮感を効果的に引き立てています。また、エンディング主題歌「EDGE OF THIS WORLD」をMISIAが担当しており、切なく美しいバラード調の楽曲が映画の感動を後押しします。MISIAの歌声とパフォーマンスは、作品のテーマを深く表現しており、視聴者の心に響きます。
おすすめポイント
1. サスペンスとホラーの要素
本作は、サスペンスとホラーの要素が強く、視聴者を緊張感のある世界に引き込みます。イバラに覆われた施設や、異形のモンスターたちの存在は、視聴者に恐怖と興奮を与えます。また、物語の展開が予測不能であり、最後まで目が離せません。
2. キャラクターの多様性
本作のキャラクターは、多様な背景と個性を持っており、それぞれが独自のドラマを抱えています。カスミの内向的な性格とシズクの外交的な性格の対比、マルコの粗暴さとローラの優秀さ、キャサリンの母性とヒステリックな一面など、キャラクターの多面性が物語を豊かにしています。また、ティムの無邪気さと裏腹の深い闇や、ペッチノの金銭への執着など、各キャラクターの心理描写が丁寧に描かれており、視聴者に深い共感を呼びます。
3. 哲学的なテーマ
本作は、メドゥーサという不治の病をテーマにしており、生命の尊さや人間の業を問いかける哲学的なテーマを含んでいます。未来への希望と絶望の狭間で生きる人々のドラマを通じて、視聴者に深い思索を促します。また、科学技術の進歩と倫理の問題、個人の生存と集団の利益の対立など、現代社会の課題を反映したテーマも含まれており、視聴者に多くの示唆を与えます。
結論
『いばらの王 -King of Thorn-』は、その壮大なストーリーと美しい映像表現、そして深遠なテーマが評価される作品です。サスペンスとホラーの要素、キャラクターの多様性、哲学的なテーマなど、視聴者を引き込む要素が満載であり、ぜひ一度視聴することをおすすめします。MISIAのエンディング主題歌「EDGE OF THIS WORLD」も、作品の感動を後押しする素晴らしい楽曲であり、視聴者の心に深く響くことでしょう。 |