落語天女 おゆい - 魅力あふれる伝統芸能の世界を描くアニメの評価と感想

落語天女 おゆい - レビューと推薦

■概要

『落語天女 おゆい』は、2006年に放送されたテレビアニメシリーズで、原作はいけだたかしによる漫画『落語天女 おゆい』と、桂歌若によるノベライズ作品です。放送期間は2006年1月6日から3月24日までで、全12話がテレビ埼玉（TVS）やUHF局で放送されました。アニメーション制作はティー・エヌ・ケーが担当し、監督は高本宣弘が務めました。この作品は、現代の女子高生たちが「天女」として覚醒し、幕末の江戸で妖魔や妖怪と戦う物語です。

■ストーリー

月島唯、飛鳥山雅、谷中妙、小石川鈴、千石涼、内藤晶という6人の現代の女の子たちは、ある日突然「天女」としての覚醒を迎えます。彼女たちは宝珠の導きによって幕末の江戸に召喚され、妖魔や妖怪たちと戦うことになります。唯は「落語天女」として、雅も「落語天女」として覚醒し、妙は「神楽天女」、鈴は「計略天女」、涼は「剣客天女」、晶は「機巧天女」としてそれぞれの力を発揮していきます。

彼女たちと共に戦うのは、落語界の神様と称される三遊亭圓朝や、平賀源内、土方歳三といった実在の人物たちです。戦いだけでなく、長屋に住む人々との交流を通じて、現代とは異なる価値観を持つ社会で成長していきます。物語のクライマックスでは、江戸を守る結界が破られようとする中、唯たちは言葉の力で人々に希望を与え、敵に立ち向かっていきます。

■キャラクター

月島唯

唯は日本橋学園高校2年生で、落語研究会に所属しています。明朗で活発、素直な性格の持ち主で、両親が営むもんじゃ焼き屋を手伝っています。江戸時代でもすぐに人々の心を掴み、「おゆいちゃん」と呼ばれるようになります。落語に興味を持ち、桂歌丸師匠に弟子入りを志願します。家事全般が得意で、食べることが大好きです。恋愛経験はなく、お父さんとしかデートしたことがありません。

飛鳥山雅

雅は日本橋学園高校2年生で、多国籍企業グループ「ASUKAYAMA」の令嬢です。トップアイドル顔負けの容姿と抜群のプロポーションを持ちますが、世間知らずで高飛車な性格です。生活能力に欠け、体力もありませんが、強いプライドと負けず嫌いな性格を持っています。唯とはライバル関係にありながらも、隠れた友情を感じています。

谷中妙

妙は日本橋学園高校2年生で、唯のクラスメイトです。少し暗めの性格で、クラスでも存在感が薄く、唯とは正反対の存在です。議員の父親やその周囲の人間を見てきたため、人間の裏表に敏感で、唯のストレートさにも疑いを抱いています。勉強が唯一の拠り所で、自己防衛本能が強いですが、江戸の人々との交流を通じて人間として成長していきます。

小石川鈴

鈴は日本橋学園大学大学院生で、IQ300の天才少女です。10歳でアメリカのGEDを突破し、大学も既に卒業しています。理性的で江戸や落語に造詣が深く、自称「江戸おたく」です。江戸時代では生きた学問を楽しみ、晶や唯とは大親友です。頭が良くあらゆる学問に精通していますが、恋や大人の世界にも強い好奇心を持っています。

千石涼

涼は日本橋学園高校2年生で、剣一筋のパーフェクト美少女です。背が高く筋肉質で、無口です。朝5時に起きて夜9時に寝る規則正しい生活を送り、自分の進むべき道を邁進しています。地道な努力を好み、スポーツ美少女としてマスコミの注目を浴びますが、本人は関心を持ちません。江戸時代では名だたる道場に修業に行き、剣を磨いていきます。

内藤晶

晶は日本橋学園大学大学院生で、23歳です。機械いじりが好きで、からくりだけが恋人というメカおたくです。過去にバイク事故で恋人を失った経験から積極的に恋人を持とうとしません。唯たちの中では年長で、お姉さんとして引っ張っていきます。楽天的でナイスボディの持ち主ですが、自分の魅力に気づいていません。江戸時代では平賀源内が晶に一目惚れします。

三遊亭圓朝

圓朝は近代落語の祖で、妖魔との戦いに備えるため、言霊を使って戦う落語天女や曲芸を使って戦う神楽天女たちを育てました。自らも言霊を使って妖魔と戦います。江戸っ子でぶっきらぼうな一面もありますが、天女たちの師として強い存在感を持っています。

平賀源内

源内は科学者・博物学者で、タイムスリップして幕末にやって来ました。豪快で自信家、そして軽い性格ですが、女性（内藤晶）に対しては煮え切らない態度を取ります。

小塚原左京

左京は京、大坂を魔都にした鬼で、右京の兄です。自ら先頭に立って指揮をふるい、結界のなくなった京、大坂では妖怪・妖魔が跋扈しています。現在はそれらの妖怪・妖魔の軍勢を使って江戸に攻め上ろうとしています。

小塚原右京

右京は江戸を魔都にするため暗躍する鬼で、おもての顔は歌舞伎役者です。美しい顔立ちをしていますが、性格は冷酷非情で、手段を選ばず陰湿な方法で唯たちを追いつめていきます。役に立たなくなった味方も簡単に切り捨てます。現在は江戸に結界が存在しているため、強い妖怪・妖魔を召還することができません。兄の左京を尊敬し、ブラザーコンプレックスを抱いています。

桂歌丸/富士子

歌丸は人気落語家で、弟子入りを希望する唯に厳しくあたりながらも、人としての成長を見守っています。唯に「芸は人なり」と教え、富士子夫人は歌丸師匠が頭の上がらない存在で、唯の弟子入りを応援しています。

ポン太

ポン太は狸の国から人間の世界へ修業にやってきた狸で、あらゆるものに化けることができます。ある人のことを好きになりますが……。

お銀

お銀は落語天女で、6人の江戸天女のリーダーです。妖魔に両親を殺された過去を持ち、自分のような悲しみを他の人に味わわせたくないため戦っています。

お久

お久も落語天女で、言霊の力を使い、おぎんと共に最前線で戦います。

お花

お花は計略天女で、天女たちの戦いの司令塔です。宝珠の力を自在に使うことができず、江戸天女たちの中で一番不安定な存在です。右京はそこにつけ込んでくるが……。

お節

お節は神楽天女で、縄を張り、独楽・鞠などを使って変幻自在の攻撃をします。得意技は変わり身です。

お咲

お咲は機巧天女で、からくりを使い後方支援を行います。常にお花と共にあり、不安定なお花のことを気遣っています。

お夏

お夏は剣客天女で、空を飛ぶことはできませんが、戦闘能力は天女たちの中で一番高いです。龍をも倒すと言われる幻の奥義を求めています。

■制作スタッフ

原作は桂歌若、監督は高本宣弘、シリーズ構成と脚本は頼経康史、キャラクター原案は堀越和音、キャラクターデザインと総作画監督は大島美和、クリーチャーデザインは宮豊、美術監督は宮野隆、色彩設定は植木義則、撮影監督は沢直人、編集は櫻井崇、音響監督は高桑一、音楽は市川淳、プロデューサーは小倉尊行、日高功、中林太、宇都貴博、三原浩樹、アニメーション制作はティー・エヌ・ケー、製作は落語天女製作委員会（東芝エンタテインメント、スリーファットサムライ/ソルブレイド、アミューズソフトエンタテインメント、マウスプロモーション、ティー・エヌ・ケー）が担当しました。

■エピソード

各エピソードのサブタイトルは以下の通りです。

• 第一席／華のお江戸に天女舞う（2006/01/05）
• 第二席／学園祭で唯、反省！（2006/01/12）
• 第三席／走れ！　唯　妖魔を倒せ（2006/01/19）
• 第四席／落語天女おゆい登場！（2006/01/26）
• 第五席／おーっほほほ！　落語天女みやび登場（2006/02/02）
• 第六席／恋の行方　それぞれの覚醒（2006/02/09）
• 第七席／涼、覚醒！　決闘！　高田馬場（2006/02/16）
• 第八席／恋の行方ふたたび　江戸湾大決戦！（2006/02/23）
• 第九席／黒衣の花嫁　明かされる秘密（2006/03/02）
• 第十席／妖魔軍侵攻！　火事と天女は江戸の華（2006/03/09）
• 第十一席／最後の戦い　失われる命（2006/03/16）
• 第十二席／信じる言葉　ふれあう心（2006/03/23）

■主題歌・楽曲

オープニングテーマは「サクラサク」で、作詞・作曲・編曲・歌はLittle Nonが担当しました。エンディングテーマは「花吹雪・恋吹雪」で、作詞は下地亜記子、作曲は杜奏太朗、編曲は野中雄一、歌は鹿島ひろ美が担当しました。

■レビュー

『落語天女 おゆい』は、美少女アクションと落語という独特の組み合わせが魅力的な作品です。現代の女子高生たちが幕末の江戸にタイムスリップし、妖魔や妖怪と戦うという設定は、視聴者を引き込む力があります。特に、各キャラクターがそれぞれ異なる「天女」として覚醒し、個々の能力を発揮するシーンは見応えがあります。

物語の中心となる月島唯は、明朗で活発な性格が魅力的で、江戸時代でもすぐに人々の心を掴む姿が印象的です。彼女の成長物語は、視聴者に共感を呼びます。また、唯とライバル関係にある飛鳥山雅の高飛車な性格や、谷中妙の暗めの性格など、キャラクターの個性が豊かで、視聴者を飽きさせません。

アニメの制作面では、キャラクターデザインや背景美術が美しく、江戸の風情を感じさせる描写が多く見られます。特に、落語のシーンでは、言葉の力が視覚的に表現されており、視覚的な美しさとストーリーの深みを感じさせます。また、音楽も作品の雰囲気を盛り上げる役割を果たしており、オープニングとエンディングの曲も印象的です。

しかし、一方で全12話という短いエピソード数の中で、キャラクターの成長やストーリーの展開を描くのは難しく、やや急ぎ足な印象を受ける部分もあります。特に、各キャラクターのバックストーリーや人間関係の深掘りがもう少しあれば、より深みのある作品になったかもしれません。

■推薦

『落語天女 おゆい』は、美少女アクションと落語というユニークな組み合わせを楽しみたい人におすすめです。また、幕末の江戸を舞台にしたタイムスリップものが好きな人や、キャラクターの成長物語を追いたい人にも向いています。特に、月島唯の明るさや、飛鳥山雅の高飛車さ、谷中妙の内向的な性格など、個性的なキャラクターたちのドラマを楽しむことができます。

さらに、落語や日本の伝統文化に興味がある人にもおすすめです。アニメの中で描かれる落語のシーンは、言葉の力や芸の深さを感じさせ、視覚的にも美しい表現がされています。江戸の風情を感じながら、現代の女子高生たちの活躍を楽しむことができるでしょう。

この作品は、美少女アニメやアクションアニメが好きな人だけでなく、落語や日本の歴史に興味がある人にも楽しめる内容になっています。ぜひ一度視聴してみてください。