あなたは被害者意識を持っていますか？

リヴァイアサンプレス:

最近、たまたま「上海人妻殺害死体隠匿事件」の犯人である朱が先月処刑されたというニュースを見ました。ここでは事件の詳細には触れません。ご興味のある方はご自身で関連レポートを検索していただけます。私が興味を持っているのは、朱氏が次の「対人被害傾向」の質問に答えた場合、何点を獲得するかということである。実際、メディアの報道や彼の告白から、朱氏の他者の痛みに対する認識（共感）の欠如が彼にはっきりと反映されていることは容易に理解できるし、事件後に朱氏の母親が息子を擁護した際の二重基準の論理も言葉を失い、衝撃的である。

この記事で言う「被害者意識」とは、気づかないうちに他人に危害を加えてしまう人のことを指します。それだけでなく、彼らは自分の「善行」が理解されていないと感じることが多く、それが「他人が私に借りがある」という感情を生み出します。この不安で依存的な性格の現れは矛盾に満ちていますが、その内部論理は自己一貫した閉じたループであり、したがって「印象に残らない人」になります。
簡単な質問: これらの質問に対する同意度を 1 (「まったく同意しない」) から 5 (「強く同意する」) のスケールで評価してください。

私にとってもっと大切なことは、私を傷つけた人が、私が不当な扱いを受けたという事実に気付くことです。
他人との関わりにおいて、私は彼らが私に接するよりも、より良心と道徳心を持って他人に接していると感じています。
私の行動が周囲の人々を傷つけたと感じたとき、私は自分が正しいことを証明する必要性を感じます。
私は他人が私に対して行った不正についてよく考えます。

これらの質問すべてで高得点（4 または 5）を取った場合、心理学者が言うところの「対人被害者傾向」がある可能性があります。

社会的曖昧さ

社会生活は常に曖昧です。デート相手があなたのテキストメッセージに返信しないかもしれません。あなたが友達に笑顔を向けても、友達は笑顔を返さないかもしれません。見知らぬ人は時々不機嫌な表情を浮かべることがあります。問題は、これらの状況をどのように解釈するかということです。これらすべてがあなたに向けられたものだとお考えですか?それとも、友達がただ嫌なことばかりして、新しいデートの相手はまだあなたに興味があるけれど冷静を装っている、道端の見知らぬ人が何かに腹を立てていてあなたの存在にすら気づいていない、といったもっとありそうなシナリオを考えていますか?

ほとんどの人は感情をコントロールし、それが社会生活の避けられない一部であることを受け入れることで、比較的簡単にこれらの社会的曖昧さを克服することができますが、中には自分自身を永遠の被害者と見なす傾向がある人もいます。

ラハフ・ガバイ氏とその同僚は、対人被害を「複数の関係に広がる被害者意識の持続」と定義しています。その結果、被害意識は個人のアイデンティティの中核部分になります。常に被害者意識を持つ人は、「外部統制」を持つ傾向があります。彼らは、人の人生は運命、運、他人の慈悲など、自分以外の力に完全に左右されると信じています。

(www.researchgate.net/publication/341548585_The_Tendency_for_Interpersonal_Victimhood_The_Personality_Construct_and_its_Consequences)

研究者は臨床観察と研究を通じて、対人関係における被害者傾向には主に 4 つの側面があることを発見しました。

（a）被害者としての認知を継続的に求めること

（b）道徳的エリート主義

（c）他人の苦しみに対する共感の欠如

（d）過去の被害体験を頻繁に反芻する。

研究者たちは、トラウマを経験することと被害者意識を持つことを同一視していないことに注意することが重要です。彼らは、深刻なトラウマや危害を経験しなくても被害者意識が育まれる可能性があると指摘しています。逆に、深刻なトラウマや被害を経験したからといって、必ずしも被害者意識が芽生えるというわけではありません。しかし、被害者意識と被害者行動は、同様の心理的プロセスと結果をもたらします。

さらに、専門家が特定した被害者意識の 4 つの特徴は個人レベルのものである (研究結果はイスラエルのユダヤ人を対象としたサンプル調査から得られた)。したがって、調査結果は必ずしもグループ レベルで当てはまるとは限りません。しかし、集団レベルでは、この 2 つの被害者意識には驚くべき類似点があることを示唆する文献があります (以下で指摘します)。

これらの注意事項を念頭に置いて、永遠の被害者意識の主な特徴を詳しく見てみましょう。

被害者意識

常に被害者として認められることを求めている。

この分野で高いスコアを獲得した人は、自分の痛みを認めてもらうことを常に必要としています。一般的に言えば、これはトラウマに対する正常な心理的反応です。トラウマを経験するには、世界は公正で道徳的な場所であるという私たちの思い込みを打ち砕くことがしばしば必要になります。自分自身の被害者意識を認めることはトラウマに対する正常な反応であり、世界が公平で公正な場所であるという自信を取り戻すのに役立ちます。

さらに、被害者が加害者に自分の悪行の責任を取ってもらい、罪悪感を表明してもらいたいと望むのは当然のことです。患者とセラピストの証言を調べた研究により、患者のトラウマを認めることがトラウマと被害からの回復を促進する上で重要であることが判明しました。

(www.researchgate.net/publication/15034528_Guilt_An_Interpersonal_Approach)

道徳的エリート主義。

この次元で高いスコアを獲得した人は、自分は道徳的に優位に立っており、他の人は皆不道徳であると考えています。道徳的エリート主義は、自分自身を「道徳的皇帝」と見なし、他人を不道徳、不公平、または利己的であると非難することで他人を支配することを可能にします。

(journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0533316414545707)

道徳的エリート主義は、しばしば、深く苦しい感情に対する防衛機構として発達し、肯定的な自己イメージを維持する方法となる。その結果、苦しんでいる人は、自分自身の攻撃的かつ破壊的な衝動を否定し、それを他人に投影することがよくあります。 「他者」は脅威として見られ、一方で自己は迫害され、脆弱で、道徳的に優れているものとして見られます。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0533316414545843)

世界を「聖人」と「悪魔」に分ける人々は、痛みや自己イメージのダメージから身​​を守るかもしれませんが、この考え方は最終的に成長と発展を妨げ、自分自身と社会の複雑さを認識する能力を無視します。

他人の痛みや苦しみに対する共感の欠如。

この次元で高いスコアを獲得した人は、自分自身の被害者意識にこだわりすぎて、他人の痛みや苦しみに気づきません。研究によれば、不当な扱いを受けたばかりの人、または過去に不当な扱いを受けたことを覚えている人は、攻撃的かつ利己的に振る舞い、他人の痛みを無視し、自分の功績を主張し、他人に何の救済も与えない権利があると考えているようです。エミリー・ジテック氏とその同僚は、そのような人々は自分自身が十分に苦しんできたと感じているため、もはや他人の痛みや苦しみを気にかける義務を感じていないのではないかと示唆している。そのため、彼らは自分と同類の人を助ける機会を逃してしまうのです。

(pdfs.semanticscholar.org/34ae/fcaa1b7f3c7ca7c968bbe5294bdf8d2e951d.pdf)

グループレベルでは、グループ内の被害者への注目が高まると、ライバルグループや無関係の反対者に対する共感が減少することが研究でわかっています。被害を示唆するだけでも、進行中の紛争が悪化する可能性があります。この考え方は、相手に対する共感を低下させることにつながります。人々は、現在の被害に対する大規模な集団的罪悪感を受け入れたくないのです。実際、「競争的被害者意識」に関する研究では、暴力的な紛争に関与しているグループのメンバーは、被害者を排他的であると見なし、敵の痛みや苦しみを軽視したり、軽視したり、完全に否定したりする傾向があることが示唆されています。

(www.jstor.org/stable/2044712​​6) (journals.sagepub.com/doi/10.1177/1088868312440048)

グループが自らの苦しみに完全に集中すると、心理学者が「被害者意識の利己主義」と呼ぶ状態が生まれます。つまり、メンバーはライバルグループの視点から物事を見ることができず、ライバルグループの苦しみに同情できないか、または同情する気がなく、自分のグループが引き起こした危害に対して一切の責任を負おうとしません。

過去の被害経験を頻繁に振り返る。

この次元で高いスコアを獲得した人は、考えられる解決策について考えたり話し合ったりするのではなく、対人関係で犯した間違いとその原因や結果について絶えず考え、話します。これには、過去の攻撃的な行動に基づいて将来の攻撃的な行動を予測することが含まれる場合があります。研究によると、被害者は自分が経験した対人関係の不正を反芻する傾向があり、この反芻によって復讐を求める意欲が高まり、その結果、許しを求める意欲が減退するそうです。

グループレベルの分析では、被害者グループはトラウマ的な出来事について頻繁に反芻する傾向がありました。たとえば、イスラエルのユダヤ人学校のカリキュラム、文化製品、政治的言説におけるホロコースト関連資料の普及は、長年にわたって増加しています。現代のイスラエルのユダヤ人は一般的にホロコーストの直接の被害者ではないが、イスラエル人はホロコーストについてますます懸念し、再び起こるかもしれないと恐れている。

(citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.882.1430&rep=rep1&type=pdf)

被害者意識の結果

対人関係の葛藤においては、それぞれの当事者は肯定的な道徳的自己イメージを維持するよう動機づけられます。したがって、異なる当事者は、2 つのまったく異なる主観的現実を生み出す可能性があります。犯罪者は自分の犯した罪の重大さを軽視する傾向があり、一方、被害者は犯罪者の動機を独断的、愚か、不道徳、​​そしてより深刻なものとみなす傾向があります。

したがって、被害者または加害者として人が育む心構えは、人々が状況を認識し、記憶する方法に根本的な影響を及ぼします。ガベイ氏とその同僚は、対人被害の特徴となる3つの主な認知バイアス、すなわち解釈バイアス、帰属バイアス、記憶バイアスを特定しました。これら 3 つの偏見により、人々は他人を許すことを嫌がるようになります。

これらのバイアスを詳しく見てみましょう。

偏見を説明する

最初のタイプの解釈バイアスは、社会的状況の不快さの認識に関係します。研究者らは、対人被害傾向が高い人は、軽度の犯罪（助けにならないなど）と重度の犯罪（誠実さや性格に関する攻撃的な発言など）の両方をより深刻だと評価していることを発見した。

2 番目のタイプの解釈バイアスは、曖昧な状況での危害の予期に関係します。研究者たちは、人間関係においてより弱い立場にある人々は、自分の部署に新しく入った上司が、実際に会う前ほど自分のことを気にかけなかったり、喜んで助けてくれたりしないだろうと信じる傾向も強いことを発見した。

有害行為の帰属

対人被害傾向のある人は、加害者に否定的な意図があると考える傾向が高く、被害を受けた後に否定的な感情がより強く長く続く傾向もありました。

これらの調査結果は、あるやり取りが有害であったかどうかという人々の認識は、有害な行動が積極的であったという認識と関係していることが多いことを示す研究結果と一致しています。対人被害者傾向のスコアが低い人に比べて、対人被害者傾向のある人は、加害者がより悪意を持っていると認識したため、気分を害する傾向が強かった。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0093650205277319)

この偏見は集団レベルでも存在することが判明しています。社会心理学者のノア・ショリ＝エヤル氏とその同僚は、集団内のさまざまな敵からさまざまな時期に継続的に被害を受け、迫害されていると感じるという信念を測る「永続的な集団内被害志向」の尺度で高いスコアを獲得した人々は、他の集団を自分の集団に対して敵対的であると分類する傾向が高く、そのような分類に対してより迅速に反応する傾向があることを発見した（そのような分類がより自動的であることを示している）。この尺度で高いスコアを獲得した人は、曖昧な状況において他のグループメンバーに悪意があると考える可能性も高くなります。歴史的な集団トラウマを思い出すと、他の集団に悪意があると考える可能性が高くなります。

(www.researchgate.net/publication/317777288_Perpetual_ingroup_victimhood_as_a_distorted_lens_Effects_on_attribution_and_categorization)

注目すべきことに、彼らの研究では、参加者の大多数がイスラエルのユダヤ人であったにもかかわらず、人々が集団内の被害者志向をどれほど強く支持しているかについては依然としてかなりのばらつきがあった。これは、誰かが被害者だからといって、必ずしも自分自身を被害者として見なければならないわけではないことをさらに証明しています。被害者意識は、実際に集団的または対人的なトラウマを経験した人とは異なります。また、同じトラウマを経験しながらも、自分自身を永遠の集団被害者として見るのを拒否する人もたくさんいます。

記憶バイアス

対人被害意識が強い人は、否定的な記憶の偏りも大きくなります。彼らは、攻撃的な行動や傷ついた気持ちを表す言葉（「裏切り」「怒り」「失望」など）をより多く思い出し、否定的な感情を思い出す傾向が強かった。対人関係における被害者意識の傾向は、肯定的な解釈、帰属、または肯定的な感情を表す言葉の想起とは関連がなく、より具体的には、否定的な刺激が被害者意識を活性化することを示唆している。これらの研究結果は、反芻がさまざまな心理的状況における出来事の否定的な記憶や認識を増大させることを明らかにした過去の研究と一致しています。

(citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.336.1616&rep=rep1&type=pdf)

グループレベルでは、グループは、他のグループによって被害を受けた出来事を含め、自分たちに最も大きな影響を与えた出来事を認識し、記憶する可能性が高くなります。

許す

研究者らはまた、人間関係において被害を受けやすい人は、傷つけられた後に加害者を許そうとする意欲が低く、復讐を避けているときに復讐したいという強い欲求を表明し、実際に報復する可能性が高いことも発見した。研究者らは、回避傾向が低いことの考えられる説明の一つとして、対人被害傾向のスコアが高い人は承認欲求が高いことが挙げられると示唆している。重要なのは、この効果は認知的視点によって媒介され、それが対人被害と負の相関関係にあることです。

グループレベルでも同様の結果が得られました。集団的被害意識が強いほど、許す意欲が低くなり、復讐心が強くなるという相関関係があった。この結論は、ホロコースト、北アイルランド紛争、イスラエル・パレスチナ紛争などのさまざまな文脈で確認されています。

精神の起源

被害者意識はどこから来るのでしょうか?個人レベルでは、実際に被害を受けた過去の経験など、さまざまな要因が影響してきます。しかし、研究者たちは、不安な愛着性格が対人被害傾向の特に強い前兆であることを発見した。

不安に執着する人は、他人からの承認や絶え間ない肯定に頼る傾向があります。彼らは自らの社会的価値に疑問を抱き、常に快適さを求めます。これにより、不安依存の人は他人を非常に相反する見方で見るようになります。

一方、不安に執着する人は、他人からの拒絶を予期します。その一方で、彼らは自分の自尊心と価値を認めてもらうために他人に頼る必要があります。不安な愛着と対人被害との直接的な関連については、研究者らは「動機付けの観点から、対人被害は、対人関係において困難な否定的な感情を経験し、表現しながら、他者からの注目、共感、評価を求めることを含む、他者との不安定な関係を構築するための効果的な枠組みを不安な愛着を持つ個人に提供すると思われる」と指摘している。

グループレベルでは、ガバイ氏とその同僚は、集団的被害者意識の発達における社会化プロセスの潜在的な役割を指摘している。彼らは、人間の信念と同様に、被害者意識も学習できると指摘している。教育、テレビ番組、ソーシャルメディアなど、さまざまなチャネルを通じて、グループのメンバーは、被害者意識が権力争いに利用される可能性があること、また、一方が被害を受けたとしても攻撃は合法かつ公正である可能性があることを学ぶことができます。人々は、被害者意識を内面化することで、他者に対する力を得ることができ、認識された集団外のメンバーに課される可能性のあるオンライン上の嫌がらせや非難の結果から身を守ることができることを学ぶかもしれません。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/1088868315607800)

被害者から成長へ

事実、私たちは現在、多くの政治的、文化的団体や個人が自分たちの被害者意識を強調し、「被害者オリンピック」に一緒に参加している文化の中で生きています。 『犠牲者の国家：アメリカ人の性格の衰退』の著者チャールズ・サイクスは、この現象は、集団や個人が幸福と充実感を追求する権利から部分的に生じていると主張している。サイクスの研究を基に、ガバイ氏とその同僚は「こうした権利意識が個人レベルでの被害者意識の強さと組み合わさると、社会変革のための闘争は攻撃的、屈辱的、そして見下した形を取る可能性が高くなる」と指摘している。

しかし、ここで問題なのは、社会化のプロセスが個人に被害者意識を植え付けることができるのであれば、同じプロセスが人々に個人の成長志向を植え付けることができるはずだということです。もし私たちが幼い頃に、トラウマが私たちを定義するものではないと知っていたらどうなるでしょうか?トラウマを経験した私たちは、被害者意識が核心ではないでしょうか？私たちがトラウマから成長し、より良い人間になり、自分の人生経験を活用して、同じような状況にある他の人に希望と可能性を植え付けようとすることは可能なのでしょうか?他人を憎むことなく集団内での誇りを維持できることに私たち全員が気づいたらどうなるでしょうか?私たちが他人に優しさを期待していること、そして私たち自身ももっと優しくする必要があることに気づいたらどうなるでしょうか?誰も何に対しても権利を持っていないが、人間として扱われるに値するということに気づいたらどうなるでしょうか?

これはかなり大きなパラダイムシフトとなるだろうが、永続的な被害者意識が私たちに世界をフィルターを通して見させるという最新の社会科学と一致するだろう。フィルターを外すと、「私と同類でない人は心が違うに違いない」というのは真実ではなく、私たちのグループには聖人は誰もいないことがわかります。私たちは皆、所属したい、注目されたい、耳を傾けてもらいたい、人生に意味を持ちたいという同じ根本的な欲求を持つ人間です。

現実をできるだけ明確に見るということは、永続的な変化への重要な一歩であり、その道における重要な一歩は、永続的な被害者意識から、より生産的、建設的、希望に満ち、他者と前向きな関係を築こうとする意識に移行することだと私は信じています。

スコット・バリー・カウフマン

翻訳者：スー

校正/ブームチャチャ

オリジナル記事/www.scientificamerican.com/article/unraveling-the-mindset-of-victimhood/

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、スーがLeviathanに掲載しています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。