ペルセポリス：アニメとしての芸術性と深遠なテーマの評価

『ペルセポリス』：混迷のイランを生き抜く少女の物語

■作品概要

『ペルセポリス』は、1978年から1990年代のイランを舞台にしたアニメーション映画であり、原作はマルジャン・サトラピの自伝的グラフィックノベルです。2007年に公開され、監督はマルジャン・サトラピとヴァンサン・パロノーが務めました。映画は95分の長さで、1話完結の形式を取っています。配給会社はロングライドで、制作はKennedy/Marshall Companyが担当しました。著作権は©2007 Sony Pictures Classicsに帰属します。

■ストーリー

1978年のイラン。9歳の少女マルジは、パパとママとおばあちゃんに囲まれ、何不自由ない生活を送っていました。しかし、革命が起きてイスラム政権が誕生すると生活は一変、風紀は厳しく取り締まられ、さらにはイラン・イラク戦争も勃発してしまいます。そんな中、反抗心旺盛なマルジの言動は、自由主義の母をも不安にさせます。そこで両親は、マルジをウィーンへと留学させることを決意します。

■解説

『ペルセポリス』は、70年代から90年代の混迷するイランを舞台に、等身大の少女をユーモラスに描いた自伝的同名ノベルをアニメ化した作品です。9歳の少女・マルジャンが革命の中、自分らしい生き方を模索していく姿を描いています。キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴらが吹き替えを担当し、2007年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品審査員賞を受賞しました。イラン出身パリ在住のマルジャン・サトラピ監督自身による自伝的同名グラフィック・ノベルの映画化であり、1970~1990年代の混迷するイランを舞台に、主人公マルジの半生と3代に渡る母娘の愛情を涙と笑いを散りばめながら描いた感動作です。

■キャスト

マルジ／キアラ・マストロヤンニ
マルジの母、タージ／カトリーヌ・ドヌーブ
マルジの祖母／ダニエル・ダリュー
マルジの父、エビ／シモン・アブカリアン
少女時代のマルジ／ガブリエル・ロペス
アヌーシュおじさん／フランソワ・ジェローム

■メインスタッフ

監督／マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
製作／マルク＝アントワーヌ・ロベール、グザヴィエ・リゴ
原作／マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』(バジリコ刊)
脚本／マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
音楽／オリヴィエ・ベルネ
制作／Kennedy/Marshall Company

■詳細なストーリーとキャラクター分析

『ペルセポリス』のストーリーは、マルジの成長と彼女を取り巻く社会の変化を描いています。マルジは、革命前は自由に生きることができましたが、イスラム政権の誕生により、厳しい規制と戦争の恐怖に直面します。彼女の反抗的な性格は、家族や友人との関係を複雑にし、最終的にはウィーンへの留学を決意します。ウィーンでの生活は、マルジにとって新たな挑戦であり、異文化の中で自分のアイデンティティを見つけようとする姿が描かれています。

マルジのキャラクターは、強い意志とユーモアを持ち合わせた少女として描かれています。彼女の成長は、家族との絆や友情、そして社会の変化に対する反応を通じて描かれています。特に、マルジの母タージとの関係は、作品の中心的なテーマであり、母娘の愛情と葛藤が描かれています。また、マルジの祖母や父親も重要なキャラクターとして登場し、彼女の成長を支えます。

■アニメーションとビジュアルスタイル

『ペルセポリス』のアニメーションは、白黒のモノクロ調で描かれています。これは、原作のグラフィックノベルのスタイルを忠実に再現したものであり、物語の重厚さとリアリティを強調しています。モノクロのビジュアルは、革命や戦争の厳しさを象徴し、マルジの内面の葛藤を視覚的に表現しています。また、ユーモラスなシーンでは、ビジュアルの対比が効果的に使われ、笑いと涙を引き立てています。

■音楽とサウンドトラック

オリヴィエ・ベルネによる音楽は、物語の感情的な流れを支えています。特に、マルジの成長や家族との絆を描くシーンでは、音楽が重要な役割を果たしています。サウンドトラックは、伝統的なイランの音楽と西洋の音楽を融合させ、物語の背景とマルジの内面を表現しています。

■評価と受賞

『ペルセポリス』は、2007年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、世界中で高い評価を得ました。批評家からは、物語の深みとビジュアルの美しさが称賛され、特にマルジのキャラクターと彼女の成長が高く評価されました。また、作品のテーマである自由と抑圧、家族の絆、そして自己のアイデンティティの探求が、多くの視聴者に共感を呼びました。