『なつきクライシス』レビュー：夏の危機を描く感動の物語

『なつきクライシス』：格闘技の魅力と青春の輝きを描く傑作OVA

■作品概要

『なつきクライシス』は、鶴田洋久による日本の漫画作品を原作としたOVAで、1994年にキングレコードから発売されました。全2巻で構成されており、各巻30分、合計60分の作品です。アニメーション制作はマッドハウス、製作は集英社が担当しています。監督は第1巻を千明孝一、第2巻を坂田純一が務め、脚本は関島眞頼が担当しました。キャラクターデザインは藤川太と島村秀一、作画監督は島村秀一が手掛けています。

■ストーリー

私立剛柔高校2年生で空手部所属の貴澄夏生（なつき）は、一見すると線の細そうな美少女ですが、その腕前は男子部員からも恐れられるほどです。転校生でレスリングの天才・高岡リナとの闘いに勝利したなつきですが、彼女がかつて退学になった常東学園から汚名を晴らすため、総合格闘技の達人で男装の麗人・神取あきらがやってきます。なつきと唯一渡り合える空手部部長・柳沢と共にかつて頂点を目指していた無敵の神取に対し、なつきは果たして勝つことができるのか？

■キャラクター紹介

貴澄夏生（きすみ なつき）

主人公。通称は「なつき」。剛柔高校2年。家族構成は心配性の大学教授の父と朗らかな母との3人で同居、他に親類として巨漢の医師・伊武勇（いぶ いさむ）と婚約中の姉・五紀（いつき）、常東学園に通う気弱な従兄弟・三沢光春（みさわ みつはる）が居る。大きな瞳とポニーテールにまとめた黒髪が特徴で、身長162cm、体重48kgの17歳。体格も筋力もごく普通の少女だが、筋力に頼らない素早さで多彩な技を放ち、並みの男性はおろか、自分より大きな体格の格闘者にも立ち向かう。性格は明るく能天気、気が強くて負けず嫌い。

高岡里奈（たかおか りな）

常東学園からの転校生で、なつきのクラスメート。セミロングの金髪とたれ眼、しばしば「俺（おれ）」を一人称とする男言葉を話すのが特徴で、通称は「リナ」。常東学園で中学からのレスリングの師であり恋人でもあった武藤の選手生命を自ら絶ってしまったことに絶望、意欲を失って素行不良を理由に放校処分されたが、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンスタイルレスリングの優れた使い手であるために自校への脅威となるのを恐れた氷室から選手生命を狙われ、刺客に追われていた。

柳澤雅昭（やなぎさわ まさあき）

なつきの先輩で、実質的な師でもある青年。常東学園校長・柳澤泰山と柔術家・鷹尾郁子（たかお いくこ）の息子で、父とは絶縁状態にあり、高校時代には母からも独立して一人暮らしをしていた。身長192cm、体重98kgの大男で、鋭い眼とこけた頬が特徴。大きな感情表現をせず口下手な性格。その一方、無類の強さを誇り、なつきの越えたい目標でもある。

本堂尚弥（ほんどう なおや）

なつきと同学年の男子生徒。女子生徒の注目を浴びる容姿端麗な優男である一方、交際相手を次々と替える女たらしでもある。実はテコンドーの優れた使い手でもあり、デートを条件にした野試合をなつきに挑んで彼女を破った（なつきによれば、柳澤以外で彼女を負かした最初の相手）。

氷室狂太郎（ひむろ きょうたろう）

常東学園生徒会長。最初は常東学園を放校処分となったリナに対し粛清部隊を差し向けた黒幕として登場した。彼自身が何らかの武術を使う描写は無く、体格なども一般的で言葉遣いも丁寧だが、涼しげに他者を威圧し畏怖させる。

神取あきら（かんどり あきら）

常東学園有数の格闘家である新格闘技部主将。中学時代には全日本女子柔道選手権を制し、さらに神道塾での修練を積んでおり、関節技を中心に数多くの技を持つ。短い頭髪と男子制服で男装し、女性ながらもクッキリと割れた腹筋など筋肉質な肉体が特徴。

佐竹聡行（さたけ としゆき）

常東学園空手部主将で、神取の幼馴染でもある男子学生。全国学生空手選手権3連覇の実力者。

小橋健太（こばし けんた）

なつきの1年後輩の男子空手部員。リーゼントの髪型が特徴。硬派な考え方を持ち、女子であるなつきが男子部員をも恐れる実力を持つことに疑いを抱き、入学式の日に彼女が倒したという相撲部副将よりも格上の主将を倒すことにより実力を示そうと単身相撲部に乗り込むが惨敗、柳澤と共に救援に来たなつきが砕破の一撃で相撲部主将・来倒（きたお）を倒すのを間近に目撃し、彼女の実力を認めた。

楼部治程（ろうぶ はるほど）

なつきのクラスメートでもある男子空手部員で、染めた坊主頭が特徴。空手部員としてはなつきとの組手を避けたがる男子部員として描かれる一方、勉強はできるようで彼女から試験問題予想を依頼されたりする。

武藤慶司（むとう けいじ）

リナのレスリングの師であり恋人でもあった、常東学園レスリング部元主将。ソフトリーゼントスタイルの髪型が特徴のスポーツマンシップ溢れる好青年だったが、レスリング部の体質に疑問を持ち主将就任を機に改革を企図したことが学園の方針に反したため「粛清」の対象となり、予め部員による暴行を受けた状態で何も知らないリナとスパーリングをさせられ、彼女に類を及ぼさぬよう苦痛に耐え対戦を続けた結果、膝の靱帯を切断して退部となり、その後は行方不明となっていた。その後、才能を惜しむ学園により人格を変える洗脳を受けた結果、学園の望んだ「方針通りに動く優秀な格闘家」となる代わりに感情を失ってひたすら命令を実行するだけの「奴隷」と化していたが、最終的には元の姿に戻った。

■サブタイトル

・第1巻／CLASH－1 貴澄なつきVS高岡リナ
・第2巻／CLASH－2 貴澄なつきVS神取あきら

■主題歌・楽曲

・TM1
第1話
「Standing on my chance」
作詞／木本慶子
作曲／茂村泰彦
歌／Seraphim
・TM2
第2話
「Find a friend in me」
作詞／木本慶子
作曲／茂村泰彦
歌／三松亜美

■キャスト

・貴澄夏生／折笠愛
・高岡里奈／永島由子
・柳澤雅昭／小杉十郎太
・本堂尚弥／菊池正美
・氷室狂太郎／関俊彦
・神取あきら／鶴ひろみ
・佐竹聡行／松本保典
・小橋健太／高木渉
・楼部治程／結城比呂
・武藤慶司／関智一

■メインスタッフ

・監督／千明孝一、坂田純一
・原作／鶴田洋久
・脚本／関島眞頼
・キャラクターデザイン／藤川太、島村秀一
・作画監督／島村秀一
・美術監督／大野広司
・撮影監督／山口仁
・音響監督／本田保則
・音楽／茂村泰彦
・プロデューサー／丸山正雄、高江勇次
・アニメーション制作／マッドハウス
・製作／集英社

■作品の魅力と評価

『なつきクライシス』は、格闘技をテーマにした作品でありながら、青春の輝きや友情、成長といった要素も描かれています。主人公の貴澄夏生（なつき）は、見た目は普通の女子高生ですが、空手の腕前は男子部員をも恐れさせるほどの実力者です。彼女の闘いを通じて、自分自身と向き合い、成長していく姿が描かれています。

特に注目すべきは、格闘シーンの迫力とリアリティです。原作と同じく、リアリティ重視のアクションが特徴で、視聴者を引き込む力があります。マッドハウスのアニメーション制作による緻密な作画と動きは、格闘技の魅力を最大限に引き出しています。また、各キャラクターの個性や背景も深く掘り下げられており、ストーリーに厚みを与えています。

音楽も作品の魅力を高める重要な要素です。第1話の主題歌「Standing on my chance」と第2話の主題歌「Find a friend in me」は、作品の雰囲気を盛り上げるだけでなく、なつきの心情や闘いの意義を表現しています。作曲を担当した茂村泰彦の音楽は、格闘シーンの緊張感や感動を引き立てています。

■推薦ポイント

『なつきクライシス』は、格闘技ファンだけでなく、青春ドラマや成長物語を楽しみたい視聴者にもおすすめです。特に、以下のポイントが推薦の理由となります。

1. リアルな格闘シーン

マッドハウスのアニメーション制作による格闘シーンは、リアリティと迫力が際立っています。各キャラクターの技や動きが細部まで描かれており、格闘技の魅力を存分に味わうことができます。

2. 深いキャラクター描写

主人公のなつきだけでなく、ライバルや仲間たちの背景や心情も丁寧に描かれています。特に、転校生の高岡リナや男装の麗人・神取あきらのキャラクターは、ストーリーに深みを与えています。

3. 青春の輝きと成長

格闘技を通じて、なつきが自分自身と向き合い、成長していく姿が描かれています。友情やライバル関係、家族との絆など、青春の輝きを感じることができます。

4. 音楽の魅力

主題歌やBGMが作品の雰囲気を盛り上げ、格闘シーンの緊張感や感動を引き立てています。特に、茂村泰彦の音楽は作品の魅力を高める重要な要素です。

■まとめ

『なつきクライシス』は、格闘技のリアリティと青春の輝きを描いた傑作OVAです。主人公の貴澄夏生（なつき）の闘いと成長を通じて、視聴者は感動と興奮を味わうことができます。格闘技ファンだけでなく、青春ドラマや成長物語を楽しみたい視聴者にも強くおすすめします。ぜひ、この作品を手に取り、その魅力を体感してください。