腸内細菌が次世代の脳の発達に影響を与える可能性？

自閉症スペクトラム障害（ASD）は神経発達障害の一種であり、科学者は微生物の影響が世代から世代へと「受け継がれる」可能性があることを発見した。

いくつかの疫学研究では、妊娠中に感染症で入院した母親から生まれた子どもは自閉症になるリスクが高いことが示されています。

動物実験の結果はこの関連性を裏付けています。妊娠したマウスに二本鎖RNAを注入してウイルスの侵入をシミュレートすると、その子孫は人間の自閉症の症状に似た反復行動や社会的異常などを示す可能性が高くなります。

マサチューセッツ工科大学のグロリア・チョイ博士とハーバード大学医学部のジュン・ホ博士は、その理由を解明するためにいくつかの論文で協力してきました。

彼らは、侵入する微生物から身を守るために、母マウスの免疫細胞がIL-17と呼ばれるサイトカインを産生することを発見した。

このサイトカインは胎盤を通過して胎児の発達中の脳に入り、特定の脳領域の受容体に結合し、子孫の神経活動に影響を及ぼす可能性があります。

しかし、妊娠中に感染した母親全員が自閉症の子どもを出産するわけではないため、研究チームはさらに、一部の母親の免疫系が過剰に活性化する原因を調べた。

ネイチャー誌に掲載された研究で、腸内に分節した糸状細菌が発見された。

下の写真は腸内の分節糸状細菌（緑）を示しています。この細菌は感染した妊娠マウスの免疫系を過剰に刺激し、胎児の脳の発達に影響を及ぼす可能性があります（画像提供：参考資料、クレジット：ダン・リットマン、アリス・リャン、ダグ・ウェイ、エリック・ロス）

別の研究チームは、自閉症と関連があり、自閉症の治療に使用できる可能性がある別の腸内細菌を発見した。

2019年、ベイラー医科大学の神経生物学者マウロ・コスタ・マティオリ博士は、自閉症モデルのマウスの腸内に特定の細菌、ラクトバチルス・ロイテリが欠けていることを偶然発見しました。

この細菌を補給すると、マウスの症状は大幅に緩和されました。

この発見に基づいて、研究チームは、自閉症の子供たちにラクトバチルス・ロイテリを摂取させ、プラセボと比較して症状が改善するかどうかを調べる臨床試験を行っています。

私たちが開発したラクトバチルス・ロイテリ菌株はヒト臨床試験を完了しており、ASD の症状への介入において良好な結果を示しています。生きた細菌の薬💊として開発される可能性があります。

Sgritta、Martina、他(2019) 自閉症スペクトラム障害のマウスモデルにおける微生物を介した社会的行動の変化の基盤となるメカニズム。ニューロン101.2:246-259.