『神霊狩/GHOST HOUND』レビュー：サイコホラーと現実の交錯

神霊狩/GHOST HOUND - シンレイガリ ゴーストハウンド - の全方位的評価と推薦

■公開メディア

TVアニメシリーズ

■原作メディア

アニメオリジナル

■放送期間

2007年10月18日 ～ 2008年04月03日
WOWOW　2007年10月18日～2008年4月3日
(1回～12回)毎週木曜　23:30～24:00
(13回～22回)毎週木曜　24:00～24:30

■放送局

放送：WOWOW、DVD発売：ポニーキャニオン

■分数

24分

■話数

22話

■原作

プロダクション・アイジー/士郎正宗

■監督

中村隆太郎

■制作

・アニメーション制作／Production I.G
・製作／『神霊狩/GHOST HOUND』製作委員会(ポニーキャニオン、WOWOW、Production I.G、ショウゲート、マッグガーデン、TYO)

■著作

©2007 Production I.G・士郎正宗/「神霊狩/GHOST HOUND」製作委員会

■ストーリー

「うつし世はゆめ　よるの夢こそまこと」――江戸川乱歩

「黄泉の国」――、或いは「ワンダーランド」、或いは「多次元世界」、或いは「脳内世界」なのか。＜幽世＞は――「神霊」が住まうところ。「神霊」は、人の亡霊の姿ばかりではなく、遙か古代に死に絶えた生物の形を持つ者もいる。神霊は本来、現世に現れることは無かった。しかし、＜幽世＞に異変が起こりつつあった。＜幽世＞の異変は＜現世＞に浸食を始める。三人の少年たちは、それを食い止められるのだろうか。

■解説

この世界＜現世＞(うつしよ)には、電脳が発達するより遙か昔より、違う世界が重なっている。＜幽世＞(かくりよ)へ自由に行き来する事が出来る様になった少年たちは、その世界＜幽世＞を冒険する事を通して、そこが、＜現世＞、そして自分たちの脳の中とも繋がっている事を発見していく――。ホラー・ファンタジーであり、ＳＦ。スピリチュアリズム的であり、物理哲学的。未知世界の冒険であり、脳の探求でもある。しかし何より、このシリーズは、少年記を描くものである。日本の原風景の様な、地方の小さな町を舞台に、等身大の少年達をリアリスティックな視点で見つめ、彼らの驚きや恐怖、そしてわくわくする様な感覚をヴィヴィッドに描いていく。

■キャスト

・古森太郎／小野賢章
・大神　信／保志総一朗
・中嶋匡幸／福山　潤
・駒玖珠　都／矢島晶子

■メインスタッフ

・原作／Production I.G、士郎正宗
・原作協力／クロスロード
・監督／中村隆太郎
・シリーズ構成／小中千昭
・キャラクターデザイン、総作画監督／岡真里子
・美術デザイン／荒井和浩
・小物デザイン／植田実
・神霊デザイン／塩谷直義
・色彩デザイン／佐野ひとみ
・美術監督／小倉宏昌
・撮影監督／大庭直之
・3D監督／小林賢次
・編集／濱宇津妙子
・音楽／TENG
・音響監督／鶴岡陽太
・音響制作／楽音舎
・プロデューサー／木下哲哉、片桐大輔、森下勝司、山崎史紀、米澤正弘
・アニメーションプロデューサー／川口徹
・アニメーション制作／Production I.G
・製作／『神霊狩/GHOST HOUND』製作委員会(ポニーキャニオン、WOWOW、Production I.G、ショウゲート、マッグガーデン、TYO)

■メインキャラクタ

・古森太郎(こもり・たろう)
11年前、3歳の時に、5つ年上の姉・瑞香と共に、略取誘拐事件の被害者となる。太郎は生き延びたが、瑞香はその時、命を失っている。古くから水天町にある酒蔵の息子として、穏やかな性格の中学2年生に育ったが、誘拐事件のPTSDを抱え持っており、ナルコレプシー(睡眠障害)症状を自覚。カウンセリングを受けている。眠っている間に、O.B.E.(体外離脱体験)を体験し、幽世(かくりよ)をさまよい始める。

・大神　信(おおがみ・まこと)
水天町にある拝み屋・大神拝礼会教祖、大神姫子の孫。父親は、太郎が誘拐された事件の直後に自殺している。母親は家を出ており、鬱屈としながら生活している。ギターを弾くのが唯一の趣味で、フィンガリングの練習時にO.B.E.を体験。幽世へ誘われる。

・中嶋匡幸(なかじま・まさゆき)
水天町に隣接する亀岩山に新設された、大日本バイオインダストリーの研究所で、指導的立場にある、中嶋康弘の息子。東京の中学から転校してきたばかり。いつもうすら笑いの仮面を被り、太郎や信の忌まわしい過去を、閉じられた扉から無理矢理、引き出そうとする。

・駒玖珠　都(こまぐす・みやこ)
亀岩神社・神主の一人娘。小学5年生。父親は東京の大学で民俗学を教えていたが、都誕生後、生家である神社を継ぐために帰郷。母親とは離婚している。都は幽世に入ることはできないが、現世から幽世を垣間見ることができるらしい。小学生だが、太郎たちよりも大人びたところがある。

・古森良弥(こもり・よしや)
古森太郎の父。先祖伝来の酒造りの技法で、古森酒造の社長を務める古森家の大黒柱。近年、亀岩ダム、大日本バイオインダストリーズ(D.B.I.)と、水天町に新たな建造物が敷設され、河川が汚染されてきたことを、身をもって実感している。玄米酒に取り組んだり、若き杜氏・瘧師慧を起用するなど、時代の趨勢に合わせた経営を行っている。

・古森美樹(こもり・みき)
古森太郎の母。11年前、水天町で起こった幼児姉弟誘拐事件により、精神に異常を来たした。現在は小康状態を保っているが、不安なことに対して過敏になっており、時折、左の瞼が引きつるなどのチック症状を遺す。

・瘧師　慧(やくし・けい)
古森酒造で杜氏を務める。水天町の隣町である久間田に住み、幼い頃より、古森酒造の先代杜氏である祖父・瘧師善三郎から、杜氏としての技を教え込まれる。今冬の玄米酒の仕込みが、杜氏としての初仕事となる。

・平田篤司(ひらた・あつし)
古森太郎のカウンセリングのため、週に何日か水天町に通う臨床心理士、心理学者。幼い頃、誘拐事件に遭遇した太郎の脳内に対して、一方ならぬ興味を抱いている。

・大神姫子(おおがみ・ひめこ)
この地方一帯で知られる拝み屋・大神拝礼会の頭首。大神信の祖母。巫女として、政治家や有力者に数々の助言を授けてきた。孫である信には、次代の頭首として期待を寄せる一方、信の父、大神英夫のことになると、口を閉ざす傾向にある。

・加畑憲子(かばた・のりこ)
大神姫子の仕え女。旧くから姫子に仕えてきたため、大神家の習わしについて、信以上に熟知している。

・中嶋康弘(なかじま・やすひろ)
中嶋匡幸の父。大日本バイオインダストリーズ(D.B.I.)に務めている。バイオ研究者。研究に没入するうち、家庭を顧みなくなる。妻、智香とは冷めた間柄にあり、匡幸に対しても形式的な父親を演ずる。

・駒玖珠　孝仁(なかじま・たかひろ)
駒玖珠都の父。亀岩神社の宮司を務めている。宮司になる前は、東京の大学で民俗学の助教授を務めていた。酒が好きで、都に隠れて冷蔵庫のワンカップを取り出すことも。大神信の父・大神英夫とは、高校時代、友人関係にあった。

・鳳　麗華(おおとり・れいか)
大日本バイオインダストリーズ(D.B.I.)に勤める、脳神経学者、脳外科医。亀岩神社の石段から転落した、古森太郎の担当医。太郎に、自身のCTとMRIを見せ、脳機能の説明を行った。D.B.I.では、何らかの極秘の研究に携わっており、中嶋康弘とも浅からぬ関係にある。

・星野道男(ほしの・みちお)
古森太郎、大神信、中嶋匡幸が通う水天町立水天中学の同級生。匡幸、信と同じB組。ゲーム好きが高じて、匡幸とつるむことが多くなる。

■サブタイトル

・FOCUS:01／Lucid Dream　-明晰夢-(2007/10/18)
・FOCUS:02／E.M.D.R. -Eye Movement Desensitization and Reprocessing-　-眼球運動による脱感作と再処理-(2007/10/25)
・FOCUS:03／Phobia Exposure　-恐怖症曝露-(2007/11/01)
・FOCUS:04／Altered States of Consciousness　-変成意識-(2007/11/08)
・FOCUS:05／O.B.E. -Out of Body Experience-　-体外離脱体験-(2007/11/15)
・FOCUS:06／Brain Homunculus　-脳の中のホムンクルス-(2007/11/22)
・FOCUS:07／L.T.P. -Long Term Potentiation-　-シナプス回路を変化させ、それを維持する能力 "人間の脳に於ける長期記憶の正体"-(2007/11/29)
・FOCUS:08／Revolution of Limbic System　-脳の扁桃体を中心とする記憶・情動を司る大脳辺緑系-その革命-(2007/12/06)
・FOCUS:09／Existential Ghosts　-実存主義的なる神霊-(2007/12/13)
・FOCUS:10／Affordance/T.F.T. -Thought Field Therapy-　-アフォーダンス[環境が生物に提供するもの]/思考場療法-(2007/12/20)
・FOCUS:11／Syntax Error　-論理的統辞論に於ける過ち/プログラム・バグ-(2008/01/10)
・FOCUS:12／Homeostasis Synchronization　-恒常性維持機能同調効果-(2008/01/24)
・FOCUS:13／For the Snark was a Boojum, you see.　-そう、そのスナークはブージャムだった-(2008/01/31)
・FOCUS:14／Emergence Matrix　-創発基盤-(2008/02/07)
・FOCUS:15／Toward an Abandoned City　-廃市へ-(2008/02/14)
・FOCUS:16／Hopeful Monster　-希望的な怪物-(2008/02/21)
・FOCUS:17／Implicate Order　-内在秩序-(2008/02/28)
・FOCUS:18／Holographic Paradigm　-水辺の量子重力理論-(2008/03/06)
・FOCUS:19／Negentropy　-可塑性時間-(2008/03/13)
・FOCUS:20／Shaman's District　-シャーマンの領域-(2008/03/20)
・FOCUS:21／Stochastic Resonance　-確率共鳴-(2008/03/27)
・FOCUS:22／Passage　-道程/暗黙知の次元-(2008/04/03)

■主題歌・楽曲

・OP1
・ポルターガイスト
・作詞／小島麻由美
・作曲／小島麻由美
・編曲／小島麻由美×塚本功
・歌／小島麻由美

・ED1
・Call My Name～風鳴りの丘～
・作詞／藤井響子(tangerine.)
・作曲／蒲池愛
・編曲／aikamachi+nagie
・歌／Yucca

神霊狩/GHOST HOUND - シンレイガリ ゴーストハウンド - の全方位的評価と推薦

■作品の概要

『神霊狩/GHOST HOUND』は、2007年から2008年にかけて放送されたアニメシリーズで、Production I.Gと士郎正宗によるオリジナル作品です。この作品は、ホラー、ファンタジー、SF、スピリチュアリズム、物理哲学など、多岐にわたるテーマを巧みに融合させ、少年たちの成長と冒険を描いています。監督は中村隆太郎、シリーズ構成は小中千昭、キャラクターデザインは岡真里子が担当し、音楽はTENGが手掛けています。

■ストーリーとテーマ

物語は、水天町という地方の小さな町を舞台に、3人の少年たちが幽世と呼ばれる異世界に触れ、自身のトラウマや過去と向き合いながら成長していく姿を描いています。幽世は神霊が住む世界であり、そこでは古代の生物や亡魂が存在します。少年たちは体外離脱体験（O.B.E.）を通じて幽世を訪れ、現世と幽世の境界が崩れつつある現象を解明しようとします。

この作品のテーマは多岐にわたりますが、特に印象的なのは「トラウマと向き合うこと」です。主人公の古森太郎は幼少期の誘拐事件によるPTSDを抱えており、そのトラウマが幽世への旅と深く結びついています。また、大神信や中嶋匡幸もそれぞれの家庭環境や過去の出来事と向き合いながら、成長していく姿が描かれています。

■キャラクター分析

・古森太郎：穏やかな性格の中学2年生で、誘拐事件のトラウマを抱えています。ナルコレプシーとO.B.E.を経験し、幽世をさまよう中で自身の過去と向き合います。彼の成長は作品の中心的なテーマであり、視聴者に深い感動を与えます。

・大神信：拝み屋の孫で、ギターを弾くことが唯一の趣味です。父親の自殺という重い過去を背負いながらも、幽世への旅を通じて自分自身を見つめ直します。彼のキャラクターは、家族の絆や伝統の重みを象徴しています。

・中嶋匡幸：東京から転校してきたばかりの少年で、他人を試すような態度を取ることが多いです。しかし、彼もまた自身の家庭環境や父親との関係に悩んでおり、幽世への旅を通じてその葛藤を解決していきます。彼のキャラクターは、表面上の冷静さと内面の葛藤を描いています。

・駒玖珠都：小学5年生の少女で、幽世に入ることはできませんが、現世から幽世を垣間見ることができます。彼女のキャラクターは、少年たちの冒険をサポートする役割を果たし、作品に温かみを与えています。

■映像と音楽

『神霊狩/GHOST HOUND』の映像は、Production I.Gの高い技術力が光る作品です。幽世の描写は幻想的でありながらも、現世との境界が曖昧に描かれることで、視聴者に不思議な感覚を与えます。また、キャラクターデザインや背景美術も非常に細かく描かれており、作品の世界観を豊かにしています。

音楽はTENGが担当しており、作品の雰囲気を引き立てる重要な要素となっています。特にオープニングテーマ「ポルターガイスト」とエンディングテーマ「Call My Name～風鳴りの丘～」は、作品のテーマを象徴するような美しいメロディーで、視聴者の心に深く残ります。

■評価と推薦

『神霊狩/GHOST HOUND』は、ホラー、ファンタジー、SF、スピリチュアリズム、物理哲学など、多岐にわたるテーマを巧みに融合させた作品です。少年たちの成長と冒険を描く中で、トラウマや過去と向き合うことの重要性を描いており、視聴者に深い感動を与えます。また、Production I.Gの高い映像技術とTENGの美しい音楽も作品の魅力を引き立てています。

この作品は、ホラー要素やSF要素を楽しみたい視聴者だけでなく、深いテーマを探求したい視聴者にもおすすめです。特に、少年たちの成長物語やトラウマと向き合う物語に興味がある方には、ぜひ視聴していただきたい作品です。また、Production I.Gのファンや士郎正宗のファンにも満足できる内容となっています。

■関連作品と推薦

『神霊狩/GHOST HOUND』を楽しんだ視聴者には、以下の作品もおすすめです。

・『攻殻機動隊』：士郎正宗の原作によるSFアニメで、サイバーパンクの世界観と深いテーマが魅力です。『神霊狩/GHOST HOUND』と同じく、Production I.Gが制作しています。

・『Serial Experiments Lain』：サイバースペースと現実世界の境界を描いたSFアニメで、深遠なテーマと独特の映像美が特徴です。『神霊狩/GHOST HOUND』のファンにも楽しめる作品です。

・『ひぐらしのなく頃に』：ホラーとミステリーを融合させた作品で、トラウマや過去の出来事が物語の中心にあります。『神霊狩/GHOST HOUND』のような深いテーマを探求したい視聴者におすすめです。

■結論

『神霊狩/GHOST HOUND』は、多岐にわたるテーマを巧みに融合させた作品であり、少年たちの成長と冒険を描く中で、トラウマや過去と向き合うことの重要性を描いています。Production I.Gの高い映像技術とTENGの美しい音楽も作品の魅力を引き立てており、ホラー、ファンタジー、SF、スピリチュアリズム、物理哲学など、様々な要素を楽しみたい視聴者におすすめの作品です。ぜひ、視聴してその深いテーマと美しい映像を堪能してください。