『タイドライン・ブルー』の魅力と評価：SFアニメの新たな地平

タイドライン・ブルー：海の彼方に広がる希望と絶望の物語

2005年に放送されたTVアニメシリーズ「タイドライン・ブルー」は、壮大なスケールで描かれた近未来SFドラマであり、人間ドラマの深みを追求した作品です。このアニメは、地球を襲った天変地異「ハンマー・オブ・エデン」から14年後の世界を舞台に、少年キールとその周囲の人々が織りなす物語を描いています。以下では、この作品の魅力や背景、キャラクター、そしてその評価について詳しく解説します。

■作品概要

「タイドライン・ブルー」は、原作メディアがアニメオリジナルという珍しい形で制作されました。監督は飯田馬之介氏、原作は小澤さとる氏、飯田馬之介氏、バンダイビジュアルが担当しています。制作はテレコム・アニメーションフィルムとテレビ朝日、製作はバンダイビジュアルが行いました。放送期間は2005年7月7日から9月29日まで、全13話で構成されています。ただし、第13話は地上波未放送で、2006年4月26日に発売されたパッケージ版DVD第7巻に収録されました。

■ストーリー

「ハンマー・オブ・エデン」は、地球の90％と60億の人類を飲み込んだ天変地異でした。その14年後、地球は青く澄み渡り、人類は新国連を結成して平和を模索していました。しかし、各国の国家エゴは依然として強く、新国連の女性事務総長アオイは苦悩しながらも、人類の再出発を目指していました。そんな中、津波によって原子力空母が運び込まれた町ヤビツで、天涯孤独の少年キールが暮らしていました。キールは新国連の事務総長アオイに引き取られ、彼女を義母としていましたが、心のわだかまりを抱えていました。

一方、軍人グールドは人類に幻滅し、戦略原潜ユリシーズによるクーデターを開始します。キールは双子の兄ティーンや少女イスラと共に、グールドの陰謀に立ち向かうことになります。この物語は、若い世代と過去の呪縛から逃れられない大人たちとの和解を描いたものであり、希望と絶望が交錯するドラマとなっています。

■解説

「タイドライン・ブルー」は、文明が海中に没した近未来の地球を舞台に、壮絶な潜水艦バトルと運命に翻弄される双子の愛憎劇を描いています。「タイドライン」とは、潮の満ち引きで変化する陸と海の境界線のことであり、人類の営みや歴史の流れを象徴しています。原作者の一人、小澤さとる氏は、「人間同士のふれあいも繰り返しの中にある」と語り、監督の飯田馬之介氏は「人間同士理解することは大変で難しいが、それだけの価値がある」と述べています。

本作品は、3DCGによるリアルな潜水艦アクションと、アニメーションならではのダイナミックな動きをフックに、困難によって成長していく少年の姿や、その指標となる大人たちの生き様を描く本格的なSFドラマです。視覚的な魅力だけでなく、深い人間ドラマも楽しむことができます。

■キャスト

主要キャラクターの声優は以下の通りです。

• キール：阪口大助
• ティーン：浪川大輔
• イスラ：わくさわりか
• ジョゼ：氷上恭子
• アオイ：榊原良子
• グールド：土師孝也
• ブランタイル：森田順平
• 劉虔：星野充昭
• KC：小形満
• マユゲ：奥田啓人
• アンジー：小池亜希子
• サンシャイン：大須賀純
• テンゲル国大統領：三戸貴史

■メインスタッフ

本作品の制作には、以下のスタッフが関わっています。

• 原作：小澤さとる、飯田馬之介、バンダイビジュアル
• 監督：飯田馬之介
• シリーズ構成：山田由香
• キャラクター原案：山下明彦
• キャラクターデザイン、総作画監督：滝口禎一
• 設定：友永和秀、横堀久雄
• メカデザイン：山根公利
• プロップデザイン：宇田明彦
• アクション作監：野口寛明
• 美術監督：白石誠
• 色彩設計：山本智子
• 撮影監督：市川幸彦
• 編集：笠原義宏
• 録音監督：佐藤敏夫
• 音楽：斉藤恒芳
• プロデューサー：杉山潔、清水暁、ヘドウィック・シュレック
• 制作：テレコム・アニメーションフィルム、テレビ朝日
• 製作：バンダイビジュアル

■メインキャラクタ

主要キャラクターの詳細は以下の通りです。

• キール：ヤビツに暮らす14歳の少年。幼い頃に両親と双子の兄ティーンと生き別れとなり、現在は新国連事務総長アオイに引き取られている。義母アオイとの間にわだかまりを抱え、イスラに特別な思いを抱いているが、なかなか切り出すことができない。直情的だが馬鹿ではない。
• ティーン：「ユリシーズ」艦長付副官。グールドの使者としてヤビツに上陸し宣戦布告を伝える。混乱の街中で双子の弟キールと再会し、イスラと共にユリシーズに招き入れるきっかけとなった。幼いころにグールドに拾われて軍人として育てられたためか、いつも感情を押し殺しているように見える。
• イスラ：彫金師の16歳の少女。若くして妊娠し、未婚の母となってしまったが、本人は至って前向き。自分で作ったアクセサリーを、町に立ち寄る船乗りに売りつけて生計を立てている。
• アオイ：キールの養母であり、新国連の事務総長。先の惨禍を人類再出発の機会として、国家や人種、宗教の違いを越えた新たな秩序を確立しようと努力しているが、相も変らぬ国家間のエゴの前に苦悩している。子供を育てた経験がないことからキールの扱いに悩む。
• グールド：米海軍戦略原潜「ユリシーズ」艦長。国連のアオイと共にハンマー・オブ・エデン後の復興に尽力していたが、この期に及んでもエゴを剥き出しにする人類に幻滅し、全世界を相手に宣戦を布告する。左半面は柔和、右半面は厳酷たる表情を持つ。
• ジョゼ：19歳。「ユリシーズ」副長。寡黙で秀麗。信念固いグールドに命を賭して務めるが、そこには軍人の義務や忠誠を超えたものが感じられる。
• アンジー：ヤビツの飲み屋で働いている女。サンシャインと一緒にキールのイカサマの片棒をかついでいる。超現実主義者。
• 魏国大統領：ハンマー・オブ・エデン後において最大の人口を抱える国「魏国」の大統領。新国連設立時に加盟の条件として、理事会の決議に対しての拒否権を要求するが理事会によって否決されたため、新国連への参加を拒絶。テンゲル国と国境紛争状態である。
• テンゲル国大統領：ハンマー・オブ・エデン後において、一手に食料生産を担うテンゲルの大統領。魏国と同様に新国連加盟の条件として拒否権を要求するが認められず新国連への参加を拒否。魏の国とは国境紛争中。
• ブランタイル：原子力空母「エレクトラ」艦長。大佐。裏表のないあけっぴろげな性格で職務に忠実な軍人。過去、グールドと里山の上官であった。アオイとも旧知の仲である。
• 里山一馬：元海上自衛隊所属のイージス護衛艦「てしお」の艦長。元海上自衛隊2佐。ユリシーズ追跡の任に就く。常に任務や命令に忠実であろうとする軍人。

■メインロボ・アイテム

本作品に登場する主要なロボットやアイテムは以下の通りです。

• 戦略型原子力潜水艦 ユリシーズ：水中排水量27777t、全長202m、全幅18.4m、全高31.1m。グールドが指揮する元米海軍の原子力潜水艦。戦略原潜の前方下部に攻撃型原潜を繋いだ特異な形状をしている。SLBM（潜水艦発射弾道弾）やSLCM（潜水艦発射巡航ミサイル）、通常魚雷、対艦ミサイル（ハープーン）などを搭載するほか、下部の攻撃型原潜の艦体に水中発進式の小型潜航艇「ルーパー」3隻を格納している。
• 護衛艦 てしお：基準排水量5050t、全長160m、全幅18.7m、全高49.7m。元海上自衛隊所属のイージス護衛艦。里山2佐が指揮を執る。VLS（垂直発射装置）にはアスロック対潜ロケットや対艦ミサイルSSM-1B、スタンダードミサイルSM-3などを搭載。短SAMや127㎜速射砲なども装備する他、対潜ヘリの搭載も可能。里山とグールドには浅からぬ因縁があるらしい。
• 攻撃型原子力潜水艦 漢(ハン)：水中排水量11050t、全長120m、全幅25.3m、全高21.2m。魏の国が保有する原子力潜水艦。無音航行装置とロケット魚雷を装備している。
• ステルス巡洋艦 ゴトランド：基準排水量12032t、全長155m、全幅40.4m、全高40.1m。元スウェーデン海軍所属のステルス巡洋艦。クラン中佐が指揮を執る。イージス護衛艦てしおと連携しユリシーズ追撃の任に就く。VLS（垂直発射装置）、CIWS（対空機関砲システム）、対艦ミサイル、速射砲を搭載。ヘリポートを装備し対潜ヘリの離発着も可能。迷彩塗装のないゴトランド級同型艦「トレクレノール」も艦隊に参加している。
• ティーゼル潜水艦 なるしお：元海上自衛隊所属のディーゼル潜水艦。単独でユリシーズを追撃するが…。
• 小型潜水艦 ルーパー：小型潜航艇。ユリシーズに3機搭載されている。水陸両用でキャタピラによる地上走行も可能。ハッチも水中、陸上用を個別にもつ。基本的に武装はないが、揚陸などさまざまな任務で活用される。
• 観測宇宙ステーション フリーダム：ハンマー・オブ・エデン後も稼動する唯一の観測宇宙ステーション。現在も地球の地形・気象・海流などのデータを収集・配信している。
• シャトル：フリーダムと地球間の人員と物資の輸送に使用されていたシャトル。
• 人員輸送用ヘリコプター：新国連所属。兵員輸送が主任務。二重反転ローターの採用による尾翼のない独特のフォルムが特徴。簡易的な対潜機材も追加搭載されている。
• 対潜ヘリコプター：新国連軍の護衛艦やフリゲートに搭載される対潜ヘリコプター。対水上レーダー、ソノブイ、MADなどの探知機材を搭載し、必要に応じて短魚雷や対艦ミサイルを選択搭載することが可能。
• VIP輸送用ヘリコプター：アオイ事務総長など、VIPを輸送するためのヘリコプター。着水も可能なようにフロートを装備している。

■サブタイトル

各話のサブタイトルは以下の通りです。

• 第1話：浮上する亡霊（2005/07/06）
• 第2話：裏切者（2005/07/13）
• 第3話：ドゥーラビィーラ（2005/07/20）
• 第4話：役割り（2005/07/27）
• 第5話：攻撃（2005/08/03）
• 第6話：K2（2005/08/10）
• 第7話：祈りの都市（まち）（2005/08/17）
• 第8話：再会（2005/08/24）
• 第9話：新しい地図（2005/08/31）
• 第10話：別れ（2005/09/07）
• 第11話：メタセコイア海戦（2005/09/14）
• 第12話：ブルー（2005/09/21）
• 第13話：兄弟（2006/04/26）

■主題歌・楽曲

オープニングテーマとエンディングテーマは以下の通りです。

• OP1
  • 曲名：Blue treasure
  • 作詞：栗林みな実
  • 作曲：栗林みな実
  • 編曲：飯塚昌明
  • 歌：栗林みな実
• ED1
  • 曲名：VOICE
  • 作詞：R・O・N
  • 作曲：R・O・N
  • 編曲：R・O・N
  • 歌：鈴木達央

■評価と推薦

「タイドライン・ブルー」は、壮大なスケールと深い人間ドラマが融合した作品であり、視覚的な魅力とストーリーテリングの両方で評価されています。特に、3DCGによる潜水艦バトルはリアルで迫力があり、視聴者を引き込む要素となっています。また、キールやティーン、イスラなどのキャラクターの成長や葛藤を通じて、人間の理解や和解の難しさを描いており、視聴者に深い感動を与えます。

この作品は、SFアニメファンだけでなく、人間ドラマを楽しみたい視聴者にもおすすめです。特に、近未来の地球を舞台にした物語や、潜水艦バトルが好きな方には必見の作品と言えるでしょう。また、栗林みな実さんのオープニングテーマ「Blue treasure」や鈴木達央さんのエンディングテーマ「VOICE」も作品の雰囲気を盛り上げており、音楽面でも楽しむことができます。

「タイドライン・ブルー」は、視覚的な美しさと深いストーリーが融合した、見応えのあるアニメです。ぜひ一度、視聴してみてください。