アテルイ：歴史とドラマが交差する感動の物語を徹底評価

『アテルイ』：歴史と夢の交錯するタイムスリップアニメ映画

■概要

『アテルイ』は、2002年12月2日に公開されたアニメ映画で、監督は出崎哲、制作はアニメ「アテルイ」映画製作委員会、(株)シネマとうほく、(有)インディーズ、(株)マジックバスが担当しています。この作品は、岩手県の歴史と文化を背景に、現代から古代へとタイムスリップする少年を描いた物語です。全93分の1話完結で、劇場公開されました。

■ストーリー

物語は、現代の岩手県水沢市から始まります。東京から転校してきた小学生の岡崎飛人は、初登校の日に学校に行かず、逃げ出してしまいます。東京の学校でいじめにあった飛人は、新しい学校でもいじめられるのではないかと恐れていたのです。追ってくる両親から逃げようとした飛人は、足を滑らせ、雨で増水した北上川に転落し、意識を失ってしまいます。

そして、飛人が目覚めると、そこはうっそうとしたブナ林に囲まれた、見たこともない場所でした。飛人は今から1200年前の昔の世界にタイムスリップしていたのです。林の中で大イノシシに襲われた飛人は、一人の精悍な若者に助けられます。それは、エミシの族長、アテルイでした。行くあてのない飛人を、アテルイは自分の村へ連れて帰ります。日高見川（昔の北上川）の近くのアテルイの村で、飛人は村の少女ララカの家族と一緒に暮らすことになります。そんな飛人に、村の大巫女アマババは「お前がここに来たのは意味がある」と謎の言葉をかけます。

ララカや村の人々の親切に触れ、だんだんエミシの生活に溶け込み始めた飛人でしたが、ララカに憧れる村の少年コムイの仲間たちは、飛人が大和の手先ではないかと疑いを持ちます。その頃、大和朝廷は東北地方の支配のために軍隊を送り、大和に従わないエミシの村々に焼き討ちをかけたり、収穫物の略奪や非道な行いをしていました。大勢のエミシの人々が殺され、仕方なく大和に従った者も“俘囚（ふしゅう）”として重い税や労役に苦しめられていました。

そんなある日、飛人とコムイは近くのエミシ村が大和兵の焼き討ちにあっているところに出くわします。あやうく兵士の剣にかかって斬られそうになったコムイを、飛人は身を挺して守り、それがきっかけで二人の間に友情が芽生えます。しかし、アテルイ達の土地を奪おうとする大和軍は、789年（延暦8年）、遂に5万もの大軍で総攻撃をしかけてきます。アテルイの親友モレをはじめとする近隣の村々の族長達は、先祖代々暮らしてきたエミシの土地を、北の大地を守るために、アテルイとともに立ち上がります。エミシの連合軍は巣伏山の頂きに集結し、総大将に選ばれたアテルイは、大和軍との壮絶な決戦に臨むのです。

■解説

20世紀の終わりから21世紀の始まりにかけて、平和と豊かさを追求する新たな時代が到来しました。この新しい時代を迎えるにあたり、様々な分野から21世紀のビジョンが語られています。私たちは、その起点を「地方」に置くことで、未来に向けた「夢」を描こうと考えました。かつて岩手の地は「辺境の地」と呼ばれ、日本の歴史の中で不当な扱いを受けてきました。時代を超えた差別にさらされながらも、国の大きな転換期にはその下支えとしての役割を果たしてきました。

この視点を乗り越え、正しい歴史認識に基づいて、自らの故郷岩手に誇りを持つことから未来を見つめようと考えました。8世紀、古代東北に展開した岩手そして北の地の父祖たちは、その後の歴史の中で不当な扱いを受けてきました。「蝦夷」と蔑まれ、当時の大和朝廷から蝦夷征伐の対象とされました。789年、大和朝廷から派遣された蝦夷征伐の大軍を見事に打ち破った蝦夷の族長・アテルイとその勇者たちは「鬼」や「悪路王」として、その後の歴史の中で評価を逆転させられてきました。しかし、近年の歴史学の進展と新たな考古学の発見により、私たちは蝦夷の真の姿を知ることができるようになりました。

四季折々に多くの恵みをもたらした豊穣な北の大地。争いを求めず、広く大陸の異民族にさえ心を開きながら展開された交易による広い地域間交流。そして豊かな自然を背景に自然界と心交わせながら営まれた精神生活の驚くほどの豊かさ。北の大地は、決して言われていたようなものではありませんでした。遠く縄文から受け継がれた自然と共生する先進的な思想さえも持ち合わせていました。そしてその北の大地を、親や子や同胞たちを、いわれなき侵略から守るために敢然と戦いを挑み勝利を収めたアテルイとその勇士たちの姿を生き生きと現代のスクリーンに蘇らせたいと考えました。

この私たちの願いは、岩手の心ある多くの方々の共感となり、岩手発信の文化創造運動として岩手の地から全国に送り、21世紀を生きる子どもたちの心に故郷に対する誇りとして語り継いでいきたいと考えました。この運動の成功に向けて、多くの方々のご支援を心よりお願い申し上げます。

■キャスト

• アテルイ：大友康平
• アマババ：長岡輝子
• ララカ：桑島法子
• 岡崎飛人：日下ちひろ
• モレ：平野正人
• 朴葉の仮面の男：ザ・グレート・サスケ
• 飛人の父：あんべ光俊

■メインスタッフ

• 企画：村上熙、加藤善正、中村敏功、宮森淳博
• 監督：出崎哲
• 監修：佐藤秀昭
• 脚本：鈴木良武、小出一巳、市川卓、末永光代、出崎哲
• 絵コンテ：森田皓光、櫻井美知代、長山洋、前島健一
• キャラクターデザイン、レイアウト監修：清水恵蔵
• キャラクターデザイン、絵コンテ：四分一節子
• アニメーション演出：棚橋一徳
• 作画監督：茅野京子、進藤満尾、山沢実
• 美術監督、美術設定：小林七郎
• 色彩設定：西川裕子
• 撮影監督：岡崎英夫
• 音響効果：加藤昭二
• 編集：宮城重夫
• 音楽：中島優貴
• 音響監督：清水勝則
• プロデューサー：島居明夫、小室皓充、出崎哲
• 製作協力：アニメ「アテルイ」製作上映運動推進岩手県民の会、岩手県、水沢市
• 製作：アニメ「アテルイ」映画製作委員会、シネマとうほく、インディーズ、マジックバス

■主題歌・楽曲

• TM1「GLORY」
• 作詞：大友康平、松井五郎
• 作曲：箕輪卓志
• 編曲：HOUND DOG
• 歌：大友康平
• ED1「ATERUI will HERO」
• 作詞：出智魚
• 作曲：YuichiIkuzawa、K-A-Z
• 編曲：K-A-Z
• Vocal：生沢佑一

■評価と感想

『アテルイ』は、歴史とフィクションが交錯するタイムスリップアニメ映画として、多くの視聴者に感動を与えました。特に、岩手県の歴史と文化を背景にしたストーリーは、地元の人々にとって大きな誇りとなりました。監督の出崎哲は、古代のエミシの生活や戦いをリアルに描き出し、視聴者にその時代を体感させることに成功しています。また、主人公の飛人が現代から古代へとタイムスリップする設定は、子どもたちにも親しみやすいものとなっています。

キャストも豪華で、アテルイ役の大友康平やララカ役の桑島法子など、声優陣の演技が物語を盛り上げています。特に、アテルイの勇敢な姿やアマババの神秘的な存在感は、視聴者に強い印象を与えました。また、音楽も物語を引き立てる重要な要素となっており、TM1「GLORY」とED1「ATERUI will HERO」は、視聴者の心に深く響きました。

この映画は、岩手県の歴史と文化を再評価するきっかけとなり、地元の人々だけでなく全国の視聴者にもその価値を伝えることができました。21世紀を生きる子どもたちに、故郷に対する誇りを感じさせる作品として、今後も語り継がれることでしょう。

■推薦ポイント

• 歴史とフィクションの融合：古代のエミシの生活や戦いをリアルに描き出しながら、タイムスリップというフィクション要素を巧みに取り入れたストーリー展開が魅力です。
• 地元愛と誇り：岩手県の歴史と文化を背景にした物語は、地元の人々に大きな誇りを与え、全国の視聴者にもその価値を伝えます。
• 感動的な音楽：TM1「GLORY」とED1「ATERUI will HERO」は、物語の感動をさらに深める重要な要素となっています。
• 豪華なキャスト：大友康平や桑島法子など、声優陣の演技が物語を盛り上げ、視聴者に強い印象を与えます。
• 子どもにも親しみやすい：タイムスリップという設定は、子どもたちにも親しみやすく、歴史への興味を引き立てます。

■関連情報

『アテルイ』は、岩手県の歴史と文化を再評価するきっかけとなりました。岩手県の観光地や歴史的なスポットを訪れる際には、この映画のストーリーを思い出しながら、より深くその地の歴史を感じることができるでしょう。また、映画の制作背景やスタッフのインタビューなども興味深い内容となっており、さらに詳しく知りたい方にはおすすめです。

■結論

『アテルイ』は、歴史とフィクションが交錯するタイムスリップアニメ映画として、多くの視聴者に感動を与えました。岩手県の歴史と文化を背景にしたストーリーは、地元の人々にとって大きな誇りとなり、全国の視聴者にもその価値を伝えることができました。豪華なキャストと感動的な音楽も物語を引き立て、子どもたちにも親しみやすい作品となっています。今後もこの映画は、21世紀を生きる子どもたちに故郷に対する誇りを感じさせる作品として、語り継がれることでしょう。