ゴキブリたちの黄昏:異色の世界観と深遠なテーマを探る

ゴキブリたちの黄昏:異色の世界観と深遠なテーマを探る

ゴキブリたちの黄昏 - ゴキブリタチノタソガレ -

■公開メディア

劇場

■原作メディア

アニメオリジナル

■公開日

1987年11月21日 ~ 0000年01月01日

■配給会社

ヘラルド・エース

■映倫番号

112446

■分数

105分

■話数

1話

■監督

・監督/吉田博昭
・アニメーションディレクター/平田敏夫

■制作

・アニメーション制作/マッドハウス
・制作協力/アニメーション・スタッフルーム
・製作/吉田博昭、多賀英典
・製作/ティー・ワイ・オー=キティ・フイルム

■ストーリー

サイトウさんは広告会社に勤めるデザイナー。30歳を越えているがまだ独身で、女っ気はない。趣味はプラモデルづくりと料理で、特に料理に関しては異常に熱心だった。ところが後片付けにはまるで興味がなく、台所には食器があふれ、サイトウさん家はゴキブリたちにとって天国だった。サイトウ家に棲みついているゴキブリは、情熱的な美少女ゴキブリのナオミ、その許婚者でシティボーイのイチロー、スポーツマンのタカシ、ひょうきんな評論家のヤスオ、ナオミの親友のパセリ、ゴキブリ神話に詳しいナオミの祖父、ゴキブリ国の有力者であるイチローの父、イチローの母、教授と呼ばれるゴキブリたちのリーダーなど。その他に人間との戦争に生き残った老兵たちがいた。サイトウ家の食事というとコシヒカリのご飯に、新鮮な肉や魚、ドイツ製のデリカテッセン、ノルウェーのサーディン、ボルドーのワインなど豪華版。ここに棲むゴキブリたちにとって食を求めてさ迷う時代は終わり、生活の質の向上を求める時代に入っていた。ナオミとイチローが結婚を間近に控え、アパートの国(モモコ家)からハンスというゴキブリ青年が逃亡してきた。ナオミは一目でハンスに魅せられてしまう。ハンスはさまざまなトラブルを残して帰国したが、ナオミもその後を追った。ところが、ハンスの国はゴキブリにとって地獄だった。ゴキブリ嫌いのモモコのために罪もない者たちが、”ゴキブリホイホイ”の中で家族の名を叫びながら死んでいく。そんな危機の中でゴキブリの指導者ナイロスは”人間が絶滅した後、ゴキブリの「千年王国」が実現するのでそれまで頑張ろう”と説く。人間による殺戮と飢えの中でナオミとハンスは愛し合った。一方、サイトウ家ではイチローが必死になってナオミの行方を捜しており、決して結婚式を取りやめようとはしなかった。ところが、式の前夜、ひょんなことからモモコとサイトウさんが出逢い、恋仲になった。偶然モモコと共にサイトウ家へ帰国したナオミはイチローと再会し、ショックで一時的に記憶を失った。翌日、イチローとナオミの結婚式は”死の饗宴”となった。ゴキブリ嫌いのモモコがサイトウさんとディナーを終えた後、イチローたちの姿を見つけ、”死のスプレー”を吹き付けたのである。ナオミとイチローは命からがら逃げたが一瞬何が起こったのかわからなかった。教授は「サイトウさんに会ってみよう」と言ったが、翌朝死体となって発見された。モモコはサイトウさんにとって何年ぶりかの女で、「愛しているならゴキブリをなんとかして」と言われて何もしないわけにはいかない。そしてゴキブリのホロコースト(皆殺し)が始まった。次々の殺されていくゴキブリたちの運命のカギは、「謎のゴキブリ神話」の中に隠されていた。そしてナオミは子供を産み、子孫を残すのだった。

■解説

人間に忌み嫌われながらも逞しく生きるゴキブリたちの姿を、実写とアニメーションを合成しながら描く。CM界出身の吉田博昭監督のデビュー作。

■キャスト

・サイトウさん/小林薫
・モモコ/烏丸せつこ
・ホソノ夫人/渡辺えり
・ナオミ/浅野温子
・イチロー/宮川一朗太
・ヤスオ/平田満
・パセリ/貴倉良子
・タカシ/塩屋浩三
・教授/柳生博
・アロイス/日下武史
・トーラ/北林谷栄
・ゴスケ/鳳啓助
・カンタロー/辻村真人
・ウンチ/佐々木つとむ
・フリッツ/古川登志夫
・ヨーヘン/塩屋翼
・司令官/屋良有作
・レストランのマスター/森功至
・イチローの母/中西妙子
・イチローの父/ハナ肇
・神官/伊武雅刀
・ハンス/古尾谷雅人
・ナオミの祖父/丹波哲郎

■メインスタッフ

・監督/吉田博昭
・脚本/吉田博昭
・製作/吉田博昭、多賀英典
・プロデューサー/渡辺辰己、泉真躬
・キャラクターデザイン/黒鉄ヒロシ
・撮影/三隅研次
・美術/市田喜一
・音楽/モーガン・フィッシャー
・録音/辻井一郎
・照明/内田正明
・編集/遠藤誠司
・製作協力/アニメーション・スタッフルーム
<アニメーションプロジェクト>
・プロデューサー/八巻磐、丸山正雄
・アニメーション監督/平田敏夫
・作画監督、キャラクター設定/兼森義則
・作画監督/鈴木欽一郎
・仕上監督/工藤秀子
・撮影監督/八巻磐
・撮影担当/石川欣一
・制作担当/永山邦明
・アニメーション助監督/江幡宏之、浦畑達彦、福島宏之
・作画監督補佐/桜井邦彦

■主題歌・楽曲

・TM
「ファンタジア」
作詞/かの香織
作曲/モーガン・フィッシャー
編曲/モーガン・フィッシャー
歌/かの香織
・IN1
「間抜けなRock’n Roll」
作詞/大山潤子
作曲/松田良
編曲/星勝
歌/松田良
・IN2
「海ゆかば」
作曲/信時潔
・IN3
「雷神」
作曲/J・P・スーツ
演奏/東京アカデミック・ウインド・オーケストラ
・IN4
「コブラ絶対絶命」
作曲/東海林修
・IN5
「カックンカフェ 対談編M-1」
作曲/福井峻

ゴキブリたちの黄昏 - 詳細な評測と推薦

■作品の背景と制作

1987年に公開された「ゴキブリたちの黄昏」は、吉田博昭監督のデビュー作であり、CM界からアニメーション映画へと進出した彼の独特な視点が光る作品です。マッドハウスとアニメーション・スタッフルームの協力のもと、ティー・ワイ・オー=キティ・フイルムが製作したこの映画は、105分という長さで一話完結のストーリーを描いています。ヘラルド・エースが配給し、映倫番号112446で登録されています。

■ストーリーの深層

「ゴキブリたちの黄昏」は、広告会社に勤めるデザイナー、サイトウさんの生活を舞台に、ゴキブリたちの生き様を描いています。サイトウさんは料理に熱心ですが、後片付けをしないため、台所はゴキブリたちにとって天国となっています。ゴキブリたちは、ナオミ、イチロー、タカシ、ヤスオ、パセリなど個性豊かなキャラクターで描かれ、彼らの生活や恋愛、そして人間との対立を描くことで、社会的なメッセージを込めています。

ナオミとイチローの結婚を控えた中、モモコ家から逃亡してきたハンスが登場し、ナオミの心を奪います。しかし、ハンスの国はゴキブリにとって地獄であり、ゴキブリ嫌いのモモコによって多くのゴキブリが殺されていく様子が描かれます。この中でナオミとハンスは愛し合い、人間との対立を象徴するシーンが展開されます。最終的には、サイトウさんとモモコの恋愛がゴキブリたちの運命を左右し、ナオミが子孫を残すことで物語は締めくくられます。

■キャラクター分析

サイトウさん:小林薫が演じるサイトウさんは、30歳を超えた独身のデザイナーで、料理に熱心ですが後片付けをしないという特徴的なキャラクターです。彼の生活がゴキブリたちの天国を作り出す一方で、モモコとの恋愛が物語の転機となります。

モモコ:烏丸せつこが演じるモモコは、ゴキブリ嫌いという設定で、彼女の行動がゴキブリたちの運命を大きく左右します。サイトウさんとの恋愛を通じて、彼女のキャラクターが深化していく様子が描かれています。

ナオミ:浅野温子が演じるナオミは、情熱的な美少女ゴキブリで、イチローとの結婚を控えていますが、ハンスに魅せられます。彼女の行動が物語の中心となり、ゴキブリたちの未来を象徴する存在です。

イチロー:宮川一朗太が演じるイチローは、ナオミの許婚者で、シティボーイという設定です。彼のナオミへの愛情と、彼女の行方を必死に捜す姿が描かれています。

ハンス:古尾谷雅人が演じるハンスは、モモコ家から逃亡してきたゴキブリ青年で、ナオミの心を奪います。彼の存在がゴキブリたちの運命を大きく変えるきっかけとなります。

■映像と音楽

「ゴキブリたちの黄昏」は、実写とアニメーションを合成した独特の映像表現が特徴です。吉田博昭監督のCM制作経験が活かされ、視覚的にインパクトのあるシーンが多く見られます。特に、ゴキブリたちの生活や人間との対立を描くシーンでは、リアルなアニメーションと実写の融合が見事に表現されています。

音楽はモーガン・フィッシャーが担当し、主題歌「ファンタジア」や挿入歌「間抜けなRock’n Roll」などが物語を盛り上げます。特に、かの香織の歌声が印象的な「ファンタジア」は、ゴキブリたちの悲哀と希望を象徴する曲として評価されています。

■社会的意義とメッセージ

「ゴキブリたちの黄昏」は、人間とゴキブリという異種間の対立を通じて、社会的なメッセージを込めた作品です。ゴキブリたちの生活や恋愛を描くことで、人間社会の問題点や共存の難しさを浮き彫りにしています。特に、ゴキブリ嫌いのモモコがゴキブリたちを殺戮するシーンは、人間が他者を排除する姿勢を批判するメッセージとして受け取られます。

また、ナオミとハンスの愛情や、ナオミが子孫を残すシーンは、希望と未来へのメッセージとして描かれています。ゴキブリたちの「千年王国」を目指すナイロスの言葉は、人間が絶滅した後の世界を想像させることで、環境問題や共存の重要性を訴えています。

■推薦と評価

「ゴキブリたちの黄昏」は、独特の映像表現と深いメッセージ性を持つ作品として評価されています。特に、吉田博昭監督のデビュー作として、その後の彼のキャリアを予感させる作品であり、CM界からアニメーション映画へと進出した彼の才能が光っています。

この作品は、社会的な問題を描く一方で、ゴキブリたちの個性豊かなキャラクターと、彼らの生活や恋愛を描くことで、視聴者に共感を呼びます。特に、ナオミとハンスの愛情や、サイトウさんとモモコの恋愛は、人間とゴキブリという異種間の関係を象徴するシーンとして印象的です。

音楽もまた、モーガン・フィッシャーの手によるもので、主題歌「ファンタジア」や挿入歌「間抜けなRock’n Roll」などが物語を盛り上げます。特に、かの香織の歌声が印象的な「ファンタジア」は、ゴキブリたちの悲哀と希望を象徴する曲として評価されています。

「ゴキブリたちの黄昏」は、社会的なメッセージを込めた作品として、視聴者に深い感動を与える作品です。特に、人間とゴキブリという異種間の対立を通じて、共存の難しさや環境問題を描くことで、視聴者に考えさせる作品となっています。推薦する理由としては、独特の映像表現と深いメッセージ性、そして個性豊かなキャラクターが魅力的な作品であるからです。ぜひ一度、視聴してみてください。

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